巡業ロケ形式のお笑い番組からスタジオ収録スタイルに

当時は気付かなかったが、8時だよ全員集合は、すごくお金の掛かる撮影スタイルで、生演奏をするオーケストラが、少なく見積もっても30人以上いて、そのオーケストラバックに、二階を人が歩いたり、二階建てのセットが崩れ落ちたりする大掛かりな大道具があって、そこに出演者や撮影スタッフ、撮影用の機材を乗せて移動する機材車トラックがあって、撮影は関東近郊がメインとはいえ、東京・横浜・千葉・埼玉と毎回遠征して別会場で客を入れての撮影をしている。


ひょうきん族は毎回同じスタジオ内で、客を入れずに撮影し、笑い声は客音なしの撮影スタッフの声のみ。オーケストラの生演奏も無ければ、移動用の機材車も要らない。低予算で撮影できるスタイル。


てなもんや三度笠」から続く、巡業形式の撮影スタイルなら、リアルなお客さんの反応がリアルタイムで判るので、ウケているスベっているが、即座に判断できる。巡業で場所=客を変えることで、同じネタを何度も回せる。巡業することが、TV番組のCMにもなっている。

客音なしのスタッフの笑い声だと、スタッフが面白くて笑っているのか、笑い屋として面白くなくても無理して笑っているのかが判断つきにくい。練習やリハーサルでは、一番自信のある本ネタをスタッフに見せず、本番一発勝負で(スタッフに対して)初見せの初ネタを披露するので、ネタ(演技)を練り上げることが不可能。毎週新ネタを1時間分用意しなくてはいけない。


てなもんや三度笠」では、最後に役者が水を張ったデカい水槽に落ちる。このオチが定番だけど、それをステージでやるには、ステージの上に人が丸々入るぐらいの水槽があって、その上に人が歩けるセットを組むわけで、コントの設定上の一階は実質二階で、人が歩ける強度の二階建てセットを解体してトラックで運んで、現地で組み立ててという作業で人手や金が掛かる。全員集合のオーケストラの生演奏も、何人いるのか知らないけど、フルオーケストラだと百名、簡易化して30名ぐらいだとしても、演奏者運ぶだけでもバス一台ぐらい必要なわけで、それにチューバやホルンやパーカッションやコントラバスなどの大きい楽器を運ぶ機材車も必要だし、スタジオ収録みたいにBGMはレコード掛けておけば良いって訳に行かない。すげー金掛かる。


ドリフ末期の、いかりや長介VS志村けんの争いは、オーケストラや大道具さんなどの雇用を守る立場のいかりやと、コストを削減して出演者のギャラを増やしたい志村の駆け引きだった気がする。