河合奈保子の芸能的な側面

西村知美の将来の夢がオーストラリアに家を持つことで、何故、アメリカでもイギリスでもフランスでもなく、オーストラリアでなければならないのかが、イマイチわからなかったが、河合奈保子がオーストラリア在住と聞いて、山口百恵松田聖子と並んで、女性アイドルの成功例の一つが河合奈保子なんだなと思った。


1980年代、音楽コント番組があって、ゲストのミュージシャンが歌のプロモーションで歌を歌うには、司会担当のお笑い芸人とコントをやらなければいけない時代があった。今で言えばAKBINGO!やAKB48ネ申テレビやSMAP×SMAPみたいな番組だ。


ネット動画をあさる限り、レコードのセールスにおいて松田聖子河合奈保子に勝てたのは、聖子の方がコントへの適性が高かったからだ。音楽コント番組で言えば、松田聖子は主に「8時だよ全員集合」、河合奈保子は「ヤンヤン歌うスタジオ」に出ている。志村けんによるとコントに向いているアイドルを見分ける方法がある。アイドルの前でワザとおならをして、笑えば合格らしい。松田聖子のコントを見ると、志村けんのギャグに大声を出して、よく笑う。色々チェックすると、考えオチで、2〜3秒間をおいて考えないと判らないギャグにも即爆笑で返し、数秒後にギャグの意味を理解した顔になっている。つまり、ギャグが面白い面白くない、わかるわからないに関わらず、自分が笑い屋として呼ばれていることを理解し、テンポ良く大声で笑う。


対する河合奈保子は、コメディアンのギャグに、笑ったら失礼だ、私は笑っていませんよという態度を取る。コントで自分がオチのセリフを言うときも、笑いが起きると「え?何か私まちがったことした?何故みんな笑うの?」という反応ですごく落ち込む。オチのセリフをテンポ悪く言うことで、スベって笑いが起きないと「よし、大丈夫、笑われなかった」と自信に満ちた顔になる。


河合奈保子の前で、一発屋芸人の人が一発ギャグをやる。テレビ的には若くてカワイイ女の子の笑顔と笑い声が欲しくて呼ばれている場面。ギャグに無反応の河合奈保子に、司会者がどうですか?と聞いたら「すみません。次の私のセリフで頭がいっぱいで聞いてませんでした」と答えた。司会者が「もう、奈保子ちゃん、本番中にぼ〜〜っとしないでよ」と言うと、声を出してキャハハと照れ笑いをする。一発屋芸人の人が物凄く怖い顔で河合奈保子をにらんでいる。


ここからわかるのは、河合奈保子は他人のギャグを見ていないから、どんなに面白くても笑わない。でも、自分に振られると恥ずかしいから声を出して照れ笑いをする。TV的に、河合奈保子の笑顔と笑い声が欲しい場面では、芸人にギャグをさせるのではなく、芸人に河合奈保子をいじらせるしか方法はない。ちなみに、お笑い芸人的には、自分のギャグで笑い声が起きずに、河合奈保子に振って河合奈保子のアップで笑い声が起きるのは、自分が滑って河合奈保子がウケているみたいな空気なので、結構厳しいわけです。


歌番組で、お笑い芸人ではない男性タレントが司会をしていて、次のゲストは河合奈保子さんです、で歌のスタンバイの間、横に並んで20秒ほどトークして、その間に河合奈保子の笑い声と笑顔を入れて歌に行きたい場面。司会はお笑い芸人ではないので特別面白い事は言えない訳です。太った布団だ、カエルが家に帰る、みたいなどうでもいい駄洒落を言う。松田聖子なら無理してでも笑うんです。そこスルーで「奈保子ちゃん、おっぱいおっきいね」と河合奈保子の胸に言及すると「もう、**さん、やめて下さいよ。キャハハ」で、司会者的にはよし一つノルマ達成。でも、河合奈保子は83〜84年ぐらいの時期で、アイドル扱いされたくない、巨乳扱いされたくない時期だから、おっぱいネタ振られたあと、床を思いっきりにらみつけている。笑顔と笑い声がノルマの場合、胸おっきいと言われたくなければ、カエルが家に帰るで、爆笑しなきゃいけない。どっちにしろ厳しい仕事です。


個人的に河合奈保子のコントで好きなのは、ザ・ベストテンで、曲に行く前の数十秒のコントで「河合奈保子さんは料理がお得意だということで、今日は皆さんに腕前を披露してもらいます」と言われて、居酒屋のお通しで出てくる、チクワの穴にきゅうりを入れて、斜めに切った奴を作る。


既にチクワの穴に入るサイズに切られた野菜スティック状態のきゅうりとちくわがお皿に乗って持ってこられる。河合奈保子はまず、ちくわを切って、それからきゅうりを切る。5センチぐらいのちくわを立てて、そこに10センチほどのきゅうりを差し入れると、ちくわからきゅうりが5センチほど飛び出している。そういうのを10本ぐらい立てて、ちくわの長さもきゅうりの長さもバラバラで、やたら笑えた。他の女性アイドルと違って、笑いに対する作意がなくて、オチで面白いでしょ?という顔をせずに、きれいでしょ?アートでしょ?という顔をするのが笑える。コントの台本は別人が書いているとしても、アイドルだから料理が上手じゃなきゃいけないという先入観に凝り固まっている河合奈保子の真剣さが笑える。


そのYOUTUBE動画への書き込みで、河合奈保子さんのファンの方が、コンサートでも河合奈保子さんがステージ上でカレーライスを作るコントをやっていて、見たこともないような調理法でとてもおいしそうには見えなかったと書かれていた。河合奈保子は元祖トロピカルカレーなのか。


80年代の女性アイドルでありがちなコントで、いまでいう「チューボーですよ」のような料理番組で、カレーを作る。事務所的に怪我させちゃいけないから、なるべく包丁も火も使わない方向だけど、ジャガイモ1個ぐらい皮むきして、このようにして作ったのがこちらの野菜で、といって既にきざまれたニンジン玉ねぎじゃがいもが机の下から出てきて、なべに水入れて火をかけて、それを入れたら、こうして20分煮込んだのが、こちらのナベですで、また机の下から加工済みの料理が出てくる。カレーは、白いご飯に茶色いルーで、絵的に地味なので、カワイイアイドルのイメージに合うように、緑色のキューウィー、黄色いパパイヤ・マンゴー、赤いイチゴ・さくらんぼ・スイカ乗せて、絵的にカワイイトロピカルカレーを作る。白いご飯と甘い物は混ぜるとすごくマズイ。試食で、司会者にうながされて、下っ端のお笑い芸人が一口食べて「まずい?まずい?」と聞かれて「**ちゃんが作ってくれたと思って食えば、すごくおいしいです」で、笑いが起きて、メイン司会者が一口食べて「私の口からはコメントできない。**ちゃん食べてみて」つって、本人が食べて「すっごく、マズイです」で、また笑いが起きて番組終わるパターン。バラドルがこれやると笑いに作為が見えて笑えないが、河合奈保子の料理コントはコント用のレシピなのに、真剣に作って、真剣においしいと言われたがるから笑える。