新日本プロレス

日本プロレスともめる形で分派した新日本は、アメリカのコミッショナーとのパイプが日本プロレスと比べて弱かったため、アメリカのトッププロレスラーを自団体に上げることは困難であった。結果としてコミッションに属してないプロレスと無関係な格闘家と異種格闘技戦をするとか、現地では無名な練習生クラスのレスラーを未知なる強豪として呼ぶという手段を使った。
彼らはプロレス的じゃない動きをするため、視覚的にも斬新で上手い一流レスラーと比べて強そうに見えた。相手選手に怪我をさせない、シナリオ通りの上手いプロレスが出来ない相手に、プロのプロレスラーがきちんとプロレスを作り上げる。それが古い意味での新日本プロレス的な新日本プロレスだと思う。
プロレスにはベビーフェイスとヒールがいる。ベビーフェイスのトップは創業社長兼選手で、それ以外のベビーフェイスはNo2だろうがジュニアのトップだろうが引き立て役でしかないと言ってしまうと、ヒールのトップだけは創業社長兼選手と対等に闘える。ヒールというのは外国人でなければ盛り上がらないのが世の常だ。アメリカで人気のない三流レスラーに新日本のスカウトマンが声をかける。
「自分の国でプロレスやってもベビーしかできんやろ。創業社長兼スター選手より、体がでかくて見た目が派手なお前が、ベビーでスター選手の引き立て役できると思うか。創業社長は自分よりデカくて派手な風貌の選手と並んで写真撮るの嫌がるやろ。申し訳ないけど、君の顔はベビーフェイスとしては少しいかつい。このままこの団体いても、同期の他の選手ばっか優遇されて、出世コースから外されたままやろ。創業社長は自分よりスター性のある選手を表に出したがらない。君は上司に嫉妬されてるんだよ。このままチャンス待っててもしゃーないやろ。外国でヒールやらへんか?ヒールは良いよ。ベビーじゃマイナスにしかならないデカイ体、強面の顔、全部プラスになる。ベビーなんて自分で団体起こさない限り、どこまでやっても引き立て役や。その点、ヒールはトップ立ったら、創業社長と対等や。どうや、日本に来ないか」
現地では無名の練習生クラスの選手が日本でトップレスラーになる。これがジャパニーズドリームだと思う。アブドラ・ザ・ブッチャー選手もタイガー・ジェット・シン選手もR・ボック選手もグレート・アントニオ選手も現地では三流レスラー扱いだったと聞いている。そんな選手が日本でトップに立つ。これが新日本の醍醐味なんで、アメリカのトップレスラーを現金で買って輸入するのは、馬場全日の仕事やろと思う。
けれど、いまの新日本はアメリカのトップレスラーであるブロック・レスナー選手を呼び、武藤全日は相撲取り出身でプロレスではキャリアの浅い曙選手を上手く商品に仕立て上げ、K−1は三流レスラーだったボブ・サップ選手
を一流の商品に仕上げている。
http://www.njpw.co.jp/result/2005/1008/1008_01.html
前回の東京ドームだとマット・モーガン選手VS永田選手がある意味最も新日本的な気がした。マーク・ジンドラック選手と比べて不器用で引き出しの少ない感じが強そうに見えるし恐怖感を与える。大きなモーションでゆっくりと動くのが、重量感を与えデカイ体がよりデカく見える。永田選手の受身も痛そうに見えたし、迫力があった。
有名すぎる外国人選手が出ると鮮度が落ちてるような気になってしまう。
新日本の選手がWWEと試合をしたいというが、WWEは他団体に選手を出さない鎖国政策によって、ここでしかこの選手は見れないという付加価値を出そうとしている。
WWEが日本に来たとき、トップを張ってる選手のほとんどが日本で無名の選手だったから鮮度が高そうに見えたわけだ。
名脇役、引き立て役界の頂点、三流の外国人ヒール相手に壮絶な負け方をして、三流ヒールの選手を一流の位置に持っていく職人である西村修選手ですらWWEと対抗戦をしたいと言ってるのが、どうなんだろうなと思う。