芸人の小虎主催漫才ライブ「御礼参り 其の弐」感想

  1. 会場の問題

全体を通しての印象は、ゲスト含め、大声を出している所しかウケない。小声でどんなに面白いことを言ってもウケない。 会場が渋谷Loft Heavenというライブハウスなので、アンプで増幅された音が外に漏れないように 壁全体が吸音材になっていて、客席の笑い声が全部壁に吸収されて、 ずっと薄っすら滑っている空気に成る。ソニーBeachVと同じ環境です。

ソニーのビーチブから出てきた芸人は、ハリウッドザコシショウ、バイきんぐ、錦鯉という大声系か 逆にサイレント映画でも通用するアキラ100% お笑いのネタを試す、研ぐ、作る環境としては最悪です。

 

中野TWLのような演劇系の会場の方が、客席の笑い声が壁に反響して、他の客の笑い声でつられて笑うお客さんも生まれて、笑い声が増幅し、自信がないネタを試しても、それなりにウケて一軍入りしたりするのですが。ライブハウスだと、大声じゃないとウケない、逆に大声ならウケる。結果、大声大会と発声練習にしか成らず、ネタの選別や研鑽に向かないライブに成ります。

 

小虎が月一ライブを主催してM-1を目指すというのは 2019年ミルクボーイの「漫才ブーム」ツアーをイメージしているはずなのですが、 だとすると会場選びを根本的に間違えている。逆にこの会場で勝負するなら、もっと大声出すか アキラ100%ウエスPのようなサイレントで戦える芸風に成るか。 トークの内容で笑い取るのは、この会場では無理。

  1. キャラ付けシステム付け

M-1で優勝するために月一ライブでネタを試す前提だと、システムもキャラクターも無い、 ノーマルな漫才をやっている地点で違うなと。 色んなシステム、色んなキャラクターを試して取捨選択していくなら分かるけど。 小虎のネタ動画だと「キャンプ」で、りょうくんの体の動きや声のトーンがウケてて あの動きと声のトーンだけで、客前で受けた数秒ネタだけをつないで ネタ2本作れたらThe MANZAI2011のHi-Hi的なポジションでM-1決勝行けるはず。

 

「顔」というネタでNSC大阪35期「もも」的なことをやって、お互いのキャラを探っていたけど もっとちゃんとキャラを立たせたら、ウケるはず。 兼近さんは黒髪から脱色して金髪に成って、チャラ男漫才して、 髪をピンクにして大ブレイクしたわけで。 りょうさんだと、舞台に出てくるときと、はけるときに、 ペンギンみたいに両手を上下にバタバタさせて歩くだけで、カワイイキャラで行けると思うんだよな。 イスから立ち上がるときに、両手を上下にバタバタさせて立ち上がるだけで、カワイイになるはず。

 

ツカミのドラマネタから入るシステムも、TV出る前提だと、その局のドラマしか言っちゃダメで M-1テレビ朝日で「六本木クラス」なのに、 りょうさんは毎日放送系列のMBSユニコーンに乗って」なのが 放送禁止用語を使ってネタ作るのと同じぐらいズレている。

  1. ツッコミ&台本書きが常識を知らない

ネタを書いていて、ツッコミ=常識側をやっているりょうさんが、あまり常識を知らない。 ボケに常識を押し付ける役の、りょうさんの言う常識が、 ズレているからネタとして成立してないパターンがある。

 

ネットに上がっているネタだと「キャバ嬢に成りたい」や「子育て」が分かりやすい。

「キャバ嬢に成りたい」の開始1分5秒の「オジサンがキャバ嬢をやっちゃダメか?オジサンがキャバ嬢をやっているオカマバーは普通にあるし マツコ・デラックスさんもそういうバー出身だし、新宿二丁目はオカマバーの聖地だし 東京吉本本社がある新宿ゴールデン街(歌舞伎町一丁目)も、そういう文化(LGBT)に寛容な街だと思うし 世の中の流れが、LGBTを差別してはいけない風潮に成っている中、 「オジサンはキャバ嬢をやっちゃダメだ」をTVなどの公の場で発言すると、時代的に 「同性愛者や性同一障碍者に対する差別」として糾弾される内容かと感じます。

「子育て」の開始3分19秒

「お前に子育て任せたら変な子に成っちゃったよ」 小虎チャンネルを見ると、りょうさんはアニメオタクなわけです。 小虎チャンネルを見ている小虎ファンが、この漫才を見たときに アニメオタクのりょうさんが、アニメオタク(の子ども)を批判すると キャラがブレているように見えて、ネタが嘘っぽく見えて共感しにくく成ります 台本を書くりょうさんが、自分の得意なジャンル(アニメ)をテーマに漫才やって 自分の主張を福井さんに言わせて、自分が常識側に立って、アニメオタクを批判すると キャラがブレます。 ネタを書く側は、自分の主張は自分で言って、福井さんには福井さんが言いそうなセリフを 当て書きしなきゃいけない。競馬マニアの福井さんに競馬を語らせて、りょうさんは 競馬マニアにツッコむとかじゃないとリアリティが出ない。3:25 女房は止めろ 何故、女房という言い方がダメなのかもよく分からない。 終わり方(落語でいうサゲやオチ)は、つかみと同じぐらい大事なはずなのに、 客から見て腑に落ちない終わり方だと、他がどんなにウケてても賞レースで弱くなります。

今回のネタだとアイスのネタで、先輩の家の引っ越しの手伝いをしていて、 夏で暑かったから先輩が「アイスおごってやるよ」と言ってくれて みんなはガリガリ君とかすぐ食えるアイスを注文したけど、 福井さんはスーパーカップという食うのに時間の掛かるアイスを注文して、 短時間で食って引越しの手伝いに戻らなきゃいけないのに、非常識だというネタなのですが スーパーカップは語感だけなら食うのに時間が掛かりそうだが、実際のアイスは ガリガリ君と大して変わらない時間で食える。

 

久保田食品の「おっぱいアイス」だと食うのに時間が掛かりますし レディボーデンのデカい奴とか、ローソンのフローズンパーティとか もっと食うのに時間の掛かるアイスはあって フローズンパーティは、アイスだけどレンジでチンして、 熱でマックシェイクみたいに溶けたアイスをストローで飲むのですが、 ローソンでチンし忘れて、家にレンジが無い場合、 カチコチに凍ったアイスで、金属製スプーンを差し込もうとしても、 氷がガチガチでスプーンが入らない。

御礼参り其の二の他のネタだと、「バイト先のマドンナ」も、そんな古い言い回し使わないだろう。 テレビ普及前の、アイドル映画全盛期の「若大将シリーズ」時代の言い回しじゃん。

男はつらいよシリーズのマドンナ役」とかでしか使わない。 今回のライブで実際にあった変なツッコミで言えば

りょう:好みの女性のタイプ誰だよ

福井:井上真央

りょう:そんな奴いねぇよ!井上真央のこと好きな奴なんて居ない!

百歩譲ってベッキーとか福原愛とかゴシップがあれば、まあ、そうかなとも思うが ゴシップも私が検索した限り見当たらず。普通に美人女優じゃん。

 

26歳の小虎りょうさんからすれば、既婚で35歳の9歳年上はおばさんかも知れないが 吉本のなんばグランド花月は5歳から60歳70歳のお客さんまで 全年齢に対応しなきゃいけないわけで、 5歳児からすれば、知らない女優の名前出されても困るだろうし 70歳のおじいさんからすれば、同世代の人気アイドルはキャンディーズ伊藤蘭(67歳)が 今も現役アイドルとして歌手活動していて応援しているわけで タモリさんはいまだに吉永小百合(77歳)が好きなわけで、 いまでも吉永小百合はCMにいっぱい出ているわけで。

小虎の福井さん(32歳)が井上真央(35歳)好きなのが、そんなに変か?

井上真央に親でも殺されたか?

 

りょう:井上真央のこと好きな奴なんて居ない!

これ、ニューヨーク屋敷さんの偏見ネタ、ラファエルの偏見あるあるの延長として見ると 面白いと言えば、面白い。

何の根拠も無く、「井上真央のこと、好きな奴なんて居ない!」と 断言する異常者という役回り。 でも、屋敷さんの偏見ネタは 「港区で毎晩飲んでいる女、その金、どこから出とんねん!」 とかで、芸能人の固有名詞を主語にしないし、TVに出ていく上で不利には成らない。

「OLで月の手取りが16万で、ゴルフ場で2万円のコース回って、ナイトラウンジでナイトプール行って、週末はグアムでインスタ撮って、50万円のバッグ持っているんだ。その金どこから出とんねん!」 と、一応、理屈は通っている。

 

あだ名時代の有吉にしても、実力の割にチヤホヤされている旬の人に行くわけで 何故、旬でもない井上真央という、理不尽さが、ラファエルっぽい。

 

まあ、普通に考えると、フリートークで、ツッコミのりょうさんが

好みの女性のタイプをボケの福井さんに聞いて、

絶対にボケて変な事を言ってくれると期待した上で

「そんな奴いねぇよ」というツッコミを事前に決めていて

井上真央」と言われたけど、誰か分からないまま

井上真央を好きな奴なんかいない!」と

断言した感じかなぁ

 

策士のりょうさんとしては「シン・りょう」「24の逆襲」に 井上真央を呼ぼうとしている?

 

オープニングでポイズンガールバンドM-1でやったネタに触れたとき

 
福井:いつの話だよ
りょう:たぶん、2005年頃(正確にはM-1行ったのは2004年と2006年)
福井:絶対見てないだろ!当時何歳だよ!17年前って、俺でも15歳だよ! お前、9歳じゃねぇか!
 
オープニングトークなので、台本有りなのか、フリートークなのか分かりませんが りょうさんが台本書いているのか、福井さんのフリートークなのか
どっちにしろ、「17年前のネタをおぼえているのがおかしい」というツッコミも おかしくて、りょうさんは大学で演劇を勉強してきたわけで、当然、古代ギリシャ悲劇のオデュッセウスとか、シェークスピアチェーホフ寺山修司とか 一通りは演劇の歴史を勉強して、それなりには戯曲も読んでいると思います。
 
17年も前のM-1リアルタイムで見てないじゃん!というツッコミはおかしくて 芸人なら後追いでもDVDで一通り勉強するでしょう。 なんか全体的にツッコミがズレてて、ボケがズレていないという。
 
アイスのスーパーカップで進んだネタが、 インスタントラーメンのスーパーカップで伏線回収して終わるという そのままじゃないかと。予想外の驚きが無い。
 
「バイト先のマドンナ」にしても、そのままな伏線回収なのですが
小虎として初の伏線回収ネタを作ってみたのかもな。