プロ格とか格プロとか

ボクシングで、頭を振ってパンチをかわすダッキングの技術が圧倒的にすごい選手がいたとしよう。パンチのラッシュに対して、すべてのパンチを華麗にかわす姿がファンタスティックでカリスマ的な輝きを帯びている。この動きをメディアに載せれば、ファンが大量について、チケットが売れて業界全体が潤う。ただ、この選手には弱点があって、ボディを打たれるとパンチが当たるしダウンもする。ボディ打ちなしのルールなら、カッコイイし強いんだけど、ボディ打ちありの今のボクシングルールなら、正直言って弱い選手だとする。プロモーターとしてはこの選手をスターにしたい。


その選手相手にボディ打ちなしで闘っても良いですよというボクサーが出てきて、表向きボクシングルールだけど、お互いボディ打ちなしで契約して、試合をしました。本気で顔面殴りに行ったけど全部かわされてカウンター食らって負けました。勝った選手は一躍スターになりました。格闘技的には勝った選手が偉いし、勝った選手の方がギャラの取り分が多いが、プロレス的には、あえて自分に不利なルールを飲んで、スター候補生の引き立て役をやった敗者の方がギャラ多いんですよ。誰のおかげでスターになれたんだ、と言ったときに通常のボクシングルールではスターになれなかったんでしょ、じゃあ殺陣かフェイクかと言えば、ガチで顔面殴りに行ったし、勝つつもりで勝負した。競技としてのアマチュア格闘技(アマレス・柔道)と殺陣の間に、プロ格闘技や格闘プロレスみたいな中間項がある。


頭部へのパンチを全部かわせるボクサーと闘うのが、柔道の選手だとして、ウィービングやダッキングのすごさを示せる程度に、柔道の選手も素早いパンチを出せなくてはいけなくなる。柔道の選手がパンチを出さなければ、パンチをかわすスキルも見せることが出来ない。逆にボクサーの方も柔道の選手に華を持たせなければいけないから、投げられる練習は必要になる。投げられたとき怪我しないよう受身を取る練習も必要だし、その柔道家の見せ場が、素早く相手の懐に入る技術だとすれば、相手を懐に入れないための差し合いの練習、フットワークや距離を取るためのジャブの連打も練習しなくてはいけない。ボクサーなのに柔道の練習をして、ある程度身に付けたと思ったら、次の対戦相手はムエタイの選手かもしれない。異種格闘技を長くやろうと思ったら、そのジャンルの専門家に勝てないまでも、そのジャンルの専門家の見せ場を引き出せる程度には、そのジャンルの動きを練習しなくてはいけない。純格闘技や純プロレスとは別なスキルがそこにあって、それはそれで面白かったりする。