格プロとかプロ格とか異種格闘技とか

総合格闘技の時代に、強さを売りにしたプロレスは不必要なのではないか?」
という疑問に対して、何か書いてみたい。


中国拳法(少林寺・カンフー)は琉球経由で日本に入ってきて伝統派空手になり、フルコンタクト空手極真空手)になった。中国拳法とフルコンタクト空手はどっちが強いのだろう。中国拳法&伝統派空手は試合でも打撃の型だけで、当身がない。中国拳法の試合というと、演舞の美しさを競うので、フィギュアスケートや新体操やダンスコンテストのような雰囲気になる。打撃を相手選手に当てるフルコンタクト空手は、お互いの肉体的強さを競う側面を強化している。中国で中国拳法の世界大会があって、優勝するとカンフー映画の主演として全世界デビューという記事があった。中国でも中国拳法はアクションスターのやる殺陣だという認識なのだろう。


じゃあ中国拳法はフルコンタクト空手より弱いのか。中国拳法は古代から中世にかけての中国の軍事格闘技術で、武器を持って敵を殺す技術だ。剣術・棒術などが有名だが、棒術も先に刃物の付いた槍をイメージしている。練習では木の棒で寸止めでも、実際の戦場では刃物で相手を殺すのだろう。木の棒でも、練習で力いっぱい相手を殴ったのでは、けが人が出すぎる。寸止めになるのはしょうがない。素手で相手を殴るフルコンタクト空手と、刃物で相手に切りかかる中国拳法、どちらが強いのか。古代や中世の戦場であれば、刃物の扱いに慣れた方が強いだろう。


古代から中世にかけての、武器ありの軍事技術にも色々ある。武器の種類だけ見ても、弓道・剣道・なぎなた・棒術・馬術、さらに剣道の中にも色々な流派があって、道場ごとに全部違う。その中で、どれを身に付ければ良いのか選ぶときに、それぞれの技術がどのような目的・用途に応じて作られているのかを知っておく必要がある。いまふうに言えば、モンスターハンターで、大剣を使うのか片手剣を使うのかボウガンを使うのかみたいな話だ。


異種格闘技戦は、弓道対剣道、ボウガン対片手剣的な試合だ。離れて闘うなら弓やボウガンが強いだろうし、至近距離なら剣が強いだろう。異種格闘技戦をスタイル・バーサス・スタイル(SVS)と訳すらしいが、お互いの技術体系の差異を見せるプロレスなので、至近距離勝負で一方的に剣が勝つとか、遠距離勝負で一方的に弓矢が勝つとかじゃなく、遠距離と至近距離の両方を見せなくてはいけない。弓矢が前提としている距離、剣が前提としている距離、その違いを見せるのが異種格闘技だ。通常のスポーツであれば、コートの広さや試合時間などのルールは決まっていて、その中で勝ち負けを競うが、実際の戦場になると、それらの前提条件自体が不確かになってくる。


格闘プロレスは次から次に見たこともない新奇な格闘技・技術体系を見つけてくることで、活性化してきた。サンボやグレーシー柔術やシラットなど、聞いたことない名前や見たことないユニフォーム、そういうのが出てくるたびに盛り上がる。


NWAのプロレス自体、そういうもので、髪もヒゲも胸毛も伸び放題の野生動物のような悪役レスラーが、ガオーと暴れて、アマレスという人類の英知・文化を担ったベビーフェイスが、アマレスの技術で倒す。敗戦直後の日本だと、半分アメリカの植民地でアメリカが宗主国じゃん。当時のアメリカ南部の人達以上にアマレスルールなんて判らないから、プロレス通じてハイカラな外国文化に触れるという要素があるんでしょ。レスリングが判る=知的でカッコイイみたいな。これが北部の人達からすると、アマレスなんて中学高校の体育の授業でやって、誰でも知っているようなこと何ありがたがってんだだろうし、それ以上にアマレス選手役のレスラーですらアマレスルールから逸脱した闘い方しているのが変なんだろうけど。体がでかくて、腕力自慢の野生児が、暴れたときに、アマレスルールなんて知らずに暴れる設定だから当然アマレスルールなんて守らない。そのときアマレスの技術は腕力自慢に通用するのか?は興味を引くと思うんだ。