セクハラ

セクハラというのは、性的関係であると同時に、権力の関係でもあって、強い者が弱い者に強いる関係だ。


ある職場のトップが20代の女性で、非常に仕事が出来て人柄も良い人だったので、出世も早く、下に自分より年上の男性を多く抱えていた。職場の男女比が2:1で男性の方が多い、男社会と言えば男社会な中で、自分より年上の男性を部下として抱えて、指示出したり、叱ったりというのは、男性上司であっても大変な仕事で、まして女性ともなれば、色々難しい部分はあると思う。昔「オヤジギャル」という言葉があったが、職場でおっさん上司のポジションに、女性が昇進した時に、女性というキャラで部下と接するのが困難であるため、男性以上におっさんらしい態度・言葉使いを多用して、おっさんキャラになることで、組織に溶け込むという戦略がそこにある。私の上司でもあったその女性も、過剰におっさんぽい態度をとることで、30代40代の男性の部下を従えていた。


そこに本社の指示を伝えるために、定年間際の本物のおっさん〜おじいさんが来て、20代の女性上司にエロトークをした。このとき、普段その仕事の出来るバリバリのキャリアウーマン型の女性上司に、叱られ怒られている無能な男性陣(私含む)は、聞き耳を立てた。20代の女性上司は、50代の本社社員に、どういうリアクションを取るのが正解なのだろうか?


会社の役職的に、本社の社員の方が女性上司より上のポジションで、その男性から見れば、20代の女性上司は、かわいい女の子で、自分のエロトークに対し、「きゃっ!もう、何を言うんですか。やめて下さいよ。きゃぴきゃぴ。」みたいなリアクションを期待している。その女性上司は普段、職場において部下の男性におっさんとして接している。その場に部下が居なければ、本社の人間に対して、きゃぴきゃぴした女性として接することもいとわないだろう。けれども、その職場の上司として、部下の前では、毅然とした態度で、普段から下品な下ネタも口にするおっさんとして振舞っているわけで、いまさらカマトトぶって、ぶりっ子するのも変だが、普段から過剰に空気を読んで、環境に過剰適応しているガリ勉型の優等生としては、上司の期待には応えたい。


この二律背反の環境に置かれた女性の立場をどこかで見たことがあるなと思ったら、朝のお天気ニュースで、おっさんキャスターのダジャレに対し、箸が転がってもおかしな年頃キャラで、キャハハと笑うことを要求される美人女子アナ/お天気お姉さんのポジションだった。


そこには性的関係よりも、権力関係の色が強く出ている。上司からきゃぴきゃぴすることを要求された時、しかもそれが普段の自分のキャラではない時、どうするのが正解なのか。聴こえなかった振りをしてスルーが無難だが、本当に世渡りの上手い人はきゃぴる。まあ、なんかあれだな。うん。