民営化で加速する「刑務所ビジネス」

COURRiER Japon ( クーリエ ジャポン ) 2010年 03月号 [雑誌]
クーリエ ジャポン2010年 3月号「ルポ 貧困大国アメリカ」ISBN:9784004311126 の著者による特集
「貧困大国(アメリカ)の真実」がやばい。
アメリカの社会制度がおかしくなっているのは薄々気付いていたが
ここまでひどいとは思わなかった。


少し前まで奨学金制度を使えば実質無料で大学教育を受けられたが、制度改革によって、大学が民間企業化し、返金義務の無い奨学金制度が廃止される。
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アメリカの大学の奨学金制度が、民間の銀行よりも高い利率で奨学金を貸し出していて、民間の銀行は学生に低い利率でお金を貸せない制度になっている。
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奨学金は通常の借金と違って自己破産できない。返済が滞ると職場でも家でも取立人が押しかけて来る。それが理由で会社を首になることもある。
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ホームレスはホームレスであること自体を違法とする州法があちこちで作られる。
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囚人の数が増える。1980年度の約3倍。
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・囚人の数が増えると、企業は安い賃金で刑務所に仕事をアウトソージングさせることができるので儲かる。
・建築業業界にとって買い手や借り手を見つけなければいけないマンションの建築は不況だが、刑務所は常に不足しており、入居者も多数確保できるので刑務所の建築は儲かる。
・刑務所に入ると、刑務所という家や囚人服という衣服などあてがわれ、最低限度の生活は出来るようになるが、そのためのお金を入居手数料として取られ、出所時に請求される。
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刑務所を出ても金が無ければ再び刑務所に戻るしかない。

この状況がレーガン・ブッシュ時代の話でなく、オバマになっても進行しているらしい。日本経済が常にアメリカ型経済を目指している以上、日本も同じ道を進む可能性が高い。


つう過激な内容で、割とショックだった。
個人的な感想を書くと、ジョルジュ・バタイユの普遍経済学呪われた部分 有用性の限界 (ちくま学芸文庫)ポストモダンにおける最も優れた経済学だとした浅田彰ISBN:9784326151288 は偉大だなぁ・・といまさらのように思うわけで。戦争に頼らない経済をいかにして作るのかを考えた時に、マルクス主義ですらフォーディズム的な分業体制によって生産力をあげるみたいな発想をしている中、生産力の向上が戦争を生み出すというバタイユの発想は正しいし、第一次大戦第二次大戦を通して本土が戦場になったヨーロッパの思想は、一度上がった経済力を軟着陸させる方法において一日の長があると思う。この手の話をすると色んな人から批判されるのですが、文学者としてのバタイユや思想史家としての浅田彰だけでなく、経済学者としてのバタイユや経済学者としての浅田彰も、偉大だと思う。


「ルポ 貧困大国アメリカ」と「ルポ 貧困大国アメリカⅡ」までは分かるが
「コミック 貧困大国アメリカ」コミック貧困大国アメリカまで来ると、さすがにどうかと思う。