東京から考える

http://www.amazon.co.jp/dp/4140910747
東浩紀の著作の中で一番、専門性が低くてその分、素人でも感想を言いやすいのが、この本。誰でもどこかの町で生まれて、どこかの町に住んでいる以上「私が生まれたのはこんな町です」「私が住んでいるのはこんな町です」「私が住みたいのはこんな町です」と反応を返しやすい。ネットで見かけた反応の中で個人的に一番面白かったのは「この人は何故、再開発についてコメントするのだろう」という書き込みで、そもそも再開発なんて、そこに住んでいる人がいる以上、こと日本に関して言えば実例が皆無で、成功例がないことを何故やろうとするんだ、という話。東さんはこの本の中で、東京の中央線沿線や西南部にある住宅地の再開発案を出している。敗戦直後の焼け野原時代に、作られた四畳半アパートがまだ残るエリアで、住民は高齢化し、いま住んでいる高齢者は20〜30年以内に亡くなることが予想され、ゴーストタウン化する前に計画的に再開発すべきという内容だが、当然のように色々反発があって、いま住んでいる人たちの居住権を守りながら再開発をすることの難しさがある。そもそも、その辺りは高級住宅地で、バブル期に四畳半アパートを売って高層ビル建てる案なんていっぱいあったはずで、地上げ屋も何度も来たはずで、にも関わらず土地売らずに四畳半で頑張ってる人たちはそれなりに金持ってて、金の力になびかない人たちで、その人たちを説得するのは難しいと予想されるわけで。


東さんの新刊「チェルノブイリ・ダークツーリズムガイド」http://genron.co.jp/shisouchizu_beta41/や「福島第一原発観光地化計画」http://fukuichikankoproject.jp/も基本、原発跡地をどう再開発するのかという話で、再開発という意味で「東京から考える」とつながっていて「なぜ再開発なのか。海を埋め立てた更地を開発する方が楽なのに。」という反応は、当然予想される。原発跡地を放置して済むなら、それで良いが、それをすると放射能漏れは発生するわけで、再開発しなければならない事情は明確になっている。とはいえ、開発より再開発の方が困難な事情に変わりはない。