ボスニア・ヘルツェゴビナにユートピア

お笑い芸人さんをゲストに迎えるトーク番組「いろもん」に漫才コンビ「ゆ〜とぴあ」が出たときのトークがすごかった。
http://www.youtube.com/watch?v=UsthRk2mfv8
ゆ〜とぴあ」のネタは「人生はゴムのようなものだ。人生をかみ締めろ」と言って、太いゴムを相方にかませて、ゴムを引っ張って、手を離し、相方の顔にゴムパッチンするだけのネタなのだが、紛争地域のボスニア・ヘルツェゴビナの戦場で、このコントをやったらしい。


最前線となる戦場で、ヘタすれば明日死ぬかも知れない緊張感と、前線とはいえ、実際には何も起きないまま敵襲があったときの準備だけを強いられるある種の退屈感、娯楽もなく異性もいないおっさんだけで何十日も過ごす空間の中に「ゆ〜とぴあ」が行って、上官と部下の設定でコントをやる。


上官「人生とはゴムのようなものだ。人生をかみ締めろ。けっして離すな。」(そう言って、ゴムをかませる)


ここで言う人生は、文字通り命であり、生命であり、「人生をかみ締めろ」は「死ぬな」というシリアスなメッセージになる。

上官(ゴムの端を引っ張って伸ばしながら)「人生は伸びる。人生は伸びるぞ」と言ってゴムを伸ばしきってから手を離す。

部下の顔面にゴムが強打。なんどか、同じパターンを繰り返した後、上官「人生はゴムだ。人生を離すな。ゴムをかみ締めろ。」部下「はい!」と返事をした瞬間、ゴムが部下の口から離れて、上官の顔面に強打。芥川龍之介の「くもの糸」のような矛盾が起きる。上官の命令を受け入れる行為が、命令に反する行為になる。


シリアスな戦場でやったコントはゆ〜とぴあさん曰く「人生で一番ウケた。」そりゃそうだろ。今になってみれば、ボスニア・ヘルツェゴビナ用に作ったコントだとしか思えない。コンビ名の「ゆーとぴあ」てのがまた、渋い。ゴムパッチンが理想郷だもんな。迷彩ヘルメットかぶって、機関銃を背負った人達に囲まれてコントをしているゆーとぴあの写真に感動。