アラザル Vol.2

定価千円で表紙写真印刷で400ページ強あって、批評12本、30万字は安い。単純計算しても400字詰め原稿用紙750枚。単行本2冊分ぐらいの文字数は入っている。造本の印象がファウストと似ている。巻末のプロフィールを見るとプロの編集者やライターが参加しているのだが、じゃなきゃ、ここまで質の良い造本をこの値段で作ることは無理だよなと思う。活字を詰め込んだ雑誌を安く作ろうと一流のプロが考えたら、ある一定のフォーマットになってそれがファウストと似た印象の造本になるのだと思う。


文字数に負けないぐらい情報や内容も濃い。音楽・文学を中心に他の芸術ジャンルの批評も横断しつつ、あくまで作品論に徹して、作品の後ろにある社会状況や政治や経済の話は(思想地図にまかせて)あまり扱わない方向。


想像以上に情報の密度が濃い。数ヵ月後に読み直さないと一度読んだだけでは内容が把握できない(良い意味で)。夜想ユリイカのポップ版、批評空間の柄谷行人サイド(政治・経済)が抜けて、浅田彰サイド(芸術・美学全般)が残った感じ。普段商業誌を作って利益を出している人たちが、利益が出ないという理由で商業誌では出来ないことを、商業誌で身に付けた技術を駆使して、やっている感じ。学術誌の内容を、商業誌のデザインで出している。


個人的には、このデザインで本当に赤字は出ないのか。表紙以外はザラ紙で良いのではないか?表紙もボール紙に四色印刷で良いんではないか?などと思う。ザラ紙だと、このサイズの文字は読めないのかも知れない。DTPエディトリアルデザインの世界を変えてしまったなぁという印象が残る。