総合誌は何を総合するのか

http://d.hatena.ne.jp/solar/20081021
>専門誌にだって、その分野での「総合」性がいる。それさえも不要ということになれば、編集という技術自体が、もう不要だということになる。データベースと検索技術さえあればいい。


ここから読み取れる仲俣さんにとっての編集の技術とは、何がいる情報で何がいらない情報かを分ける技術だと思います。
総合とは、全部ということなので、総合誌の編集というのは、単純に考えると語義矛盾なわけですが、総合誌はすべての読者、老若男女問わず読まれる物だと仮に考えてみると、いわゆるファミリー層向けのコンテンツだと考えられます。マンガに例えると「サザエさん」のように、老人の男女、勤労世代の男女、小学生の男女、幼児期の男女(初期のサザエさんにおいてタラちゃんは、タラコちゃんという女の子であり、男の子のイクラちゃんと対をなしていた)とすべての属性の人間がお茶の間に集まり繰り広げられるドタバタコメディで、老若男女問わずすべての人間が誰かには感情移入出来るように作られた物――仮にそういう物をイメージすると、これ一冊あれば、一世帯で何冊も雑誌を買わなくても一冊で済む総合的で便利な雑誌が総合誌だとなります。


>こういう話になると、いつも「総合誌の役割は終わった」という話になるけれど、本当だろうか。この先、いくつもの雑誌を同時に買う読者なんて考えられない。


この辺りを読むと、仲俣さんの考える総合誌もそのような物であるのかも知れないと思います。ところが現実の総合誌である「太陽」や「世界」は、ファミリー層向けのものというより、政治や経済や伝統文化について書かれたものというイメージが強く、これ一冊あれば専門誌はいらないと言えるものとは思えません。


総合誌 http://www.noracomi.co.jp/takahashi/zassi/sogo-st.html
世界公式HP http://www.iwanami.co.jp/sekai/
世界wiki http://tinyurl.com/6dlhf5
雑誌 太陽http://ww71.tiki.ne.jp/~doro/sun.html
雑誌 太陽http://www.hokutendo.com/taiyo.htm
雑誌「太陽」と国民文化の形成
http://www.shibunkaku.co.jp/shuppan/shosai.php?code=4784210776


上記リンクを見る限り、雑誌太陽は1896年に第2巻第9号が出ています。
どちらかと言うと、
・理想の時代(1945年〜1960年)
・夢の時代(1960年〜1975年)
・虚構の時代(1975年〜1990年)
というよりもは、ベネディクト・アンダーソン的な、もしくは「日本近代文学の起源」的な国民国家の形成に関わった雑誌で、文学史でいうところの自然主義の時代(1850年〜1900年前後。フランスにおける産業革命から第一次大戦まで。日本における明治大正期)に属するような気がします。江戸時代、国と言えば越後の国や出雲の国が国であり、国ごとに方言があって、代官がいて、関所がある。個別の都市国家(ポリス)をまとめる形でより上位概念の帝国(近代国家)が生まれて、国家連合としての帝国を形成する上で、統一した言語(標準語)なり、統一の法体系なり、国民性なりを形成するための雑誌として総合誌があったとすれば、総合誌に載っているのは、政府発信の政治経済の情報であったり、政府が認めた伝統文化、人間国宝無形文化財などの情報であったり、もしくは今後戦争などによって吸収合併する/されるかも知れない諸外国の政治・経済・文化の情報であり、その情報源が仮に現地の日本大使館であるとすれば、すべて政府発信の情報になります。発展途上国が先進国に追いつき追い越せの殖産興業でやっていく時に、八幡製鉄所のように、国営で産業を興して、採算が軌道に乗れば民営化して行くといったときの、国営期の産業といった感じが総合誌に感じられます。


アメリカの正式名称、ユナイティッド・ステイツ・オブ・アメリカのステイツの直訳が政府であることからも、アメリカは政府連合であり、国と国とを束ねる帝国であり、同じ事は植民地を持つ当時の先進諸国全体で起こっていた話で、当時は帝国というのが最先端のテクノロジーであり、だからこそ各国の国民文学を集めた世界文学全集なども価値を持った時代なのだと思います。総合誌は自国他国を問わず国、帝国について書かれた雑誌で、ある時代において総合誌や文学が世界とつながっている唯一のメディアとして感じられ、それが売りになっていた時代もあるのだと思います。そういう意味でクーリエジャポンhttp://moura.jp/scoop-e/courrier/などは、世界の面白ニュース一つとっても、南米・アフリカ・ヨーロッパと三大陸のラテン語圏をフォローしていて、アメリカローカルの芸能情報を載せる「GOSSIPS PRESS」http://www.barks.jp/news/?id=1000035708ボブ・ディラン・インタビューを除いて、ほぼ日本の音楽芸能雑誌(Ex日経エンターテイメントなど)と変わらないローリングストーン誌日本版http://www.rollingstonejapan.com/などより、面白いと感じます。