映画に関する宮台さんの発言

http://www.miyadai.com/index.php?itemid=411&catid=4
参照http://d.hatena.ne.jp/kidana/20060419
80年代初期の日本に新人類と呼ばれる政治に無関心な新しい世代が生まれてきて、その人たちがいま、55年体制下の右対左みたいな対立構造に言及している。その理由が自分の中でいまいち分からなかったのが、最近少し分かるようになった。


冷戦下においては、日本はアメリカの核の傘の下にいて、防衛政策に関してはほぼ百%アメリカに丸投げだったわけだ。冷戦の崩壊によって、自由主義社会主義という大きな二つのブロックが壊れて、アイルランド独立闘争などの独立運動や地域紛争が増えた。米ソの二つの強固なブロックから、アメリカ一強のグローバリズムと、反グローバリズム的な地域主義が同時発生し、日本国内においても右=親米・左=親ソという冷戦時代と異なり、アメリカからの軍事的独立を掲げる反米右翼や、グローバリズムに合わせようという親米左翼も出てくるし、冷戦を知らない若い世代になると、右や左と言った単語を知らないばかりか、ソ連という単語を分からない人達が出てきて、選挙権を持つようになる。それまでアメリカ丸投げで済んでいた防衛政策や外交政策などをもう一度、冷戦以前に戻って自分達の頭で考えなくてはならなくなってきている。政治に無関心であることを売りにした新人類世代が55年体制地点に戻って政治を語り出したのは、そういう事情があるようだ。


日本のネット右翼が何故諸外国から高い関心で語られるのかが、私にはよく分からなかったのだが、まず多くの国においてインターネットは左翼の武器であり、右翼はネットをやらないという前提がある。テレビやラジオと言った電波媒体は許認可事業であり、あまり過激な政府批判は許認可を取り消される可能性があるためやりづらい。新聞・雑誌なども様々な政府関連のチェックがあり、表現の自由をうたっていても、あまりに過激な反社会的内容は政府によって発禁になる。ネットはそれらの媒体と違って個人的で脱法的なバックボーンがあり、それゆえ、反権力で左翼的な媒体だと多くの国において思われてきた。


2ちゃんねるのように匿名で無責任に過激なことを書き込む媒体というのがネットに生まれた時に、第二次大戦の敗戦国では、右翼的な書き込みが増えるわけで、多くの国においては学校や教科書といった建前の世界で愛国心や祖国への誇りを教わったのが、日本では学校や教科書では戦争に対する反省と平和教育が施されて、愛国心や祖国への誇りや他国への誹謗中傷は、政府の規制が行き届かないインターネットの匿名掲示板においてしか書き込めない内容であった。外国から見てそれが奇妙に思えるのは、左翼の媒体であるネットですらあれだけ日本は右傾化しているのだから、一般のマスメディアになるともっと右傾化しているはずだととらえられているからだ。


冷戦の崩壊によって、従来の右=親米・国粋/左=親ソ・コスモポリタニズムといった図式が壊れ、アメリカ一強のグローバリゼーションと、地域主義の戦いになったときに、右=親米・グローバリズム/左=地域主義という組換えが起きる中で、新人類世代が新しい政治地図を作ろうとしているのだと思う。