ウルトラマンとプロレス

昔のアメリカのプロレスにおいて、
ベビーフェイスは人類・文明・文化を象徴し、
ヒールは動物・野生・未開の地を象徴した。という話を聞いた。
アメリカの開拓者達にとって、野生の原生林や動物は恐怖の対象であり
自分達の前に立ちふさがる困難であった。
その未開の地を開拓して行く自分達人間こそ文明を持ったベビーフェイスであると。
確かに昔の外国人レスラーのプロフィール写真を見ると、
ひとめでヒールかベビーかが分かる。


ヒールは頭髪やひげが伸び放題で、体の一部に動物の毛皮を身に付けることで、野生動物らしさを出している。頭に角のある動物(バッファロー・サイ・鹿・象)の頭部の骨、もしくはそれをかたどった物を頭にかぶるか、手に持つかして写真に写り、試合の入退場時も動物の角や牙を身に付けている。リングネームもバッファロー**とか、バイソン**とか、動物の名前が付き、得意技や必殺技も、ベアクロー(熊の爪)、ベアハッグ(熊の抱きつき)などと動物の名前が付く。時として原始人的なこん棒を持ったり、鎖を体に巻いたりしていて、挙動不審である。


ベビーフェイスは腰にチャンピオンベルトを巻き、両拳を腰に当てて、胸を張り、腹を引っ込めて逆三角形を意識した上体を形作る。記者会見で、背広にネクタイなのが文明人であるベビーフェイスで、はじめ人間ギャートルズなのがヒールだ。


この辺のプロレスと特撮テレビ番組ウルトラマンとの類似性は個人的にすごく感じる。ウルトラマンも腰に両拳を当ててポーズをとり、敵の多くは大自然から発生している。ウルトラマンを大きく見せるために、カメラは下から見上げるようにしてウルトラマンと怪獣の向かい合った絵を撮る。この時、カメラがウルトラマンを見上げる角度と、プロレスの試合を撮影するカメラマンがリング下からレスラーを見上げる角度がほぼ同じだ。ウルトラマンウルトラマンを大きく見せるために周囲にミニチュアのビルを置く。このビルの高さがウルトラマンの胸辺りになるのだが、プロレスの場合はその位置にロープが来る。ウルトラマンにおいてビルを踏み潰す怪獣は強くてデカイ。プロレスにおいてトップロープをまたぐことが許されるのは、ヒールのトップ選手だけだ。ウルトラマンにおいて正義の味方は一年間ずっと同じウルトラマンで変わり映えがしないが、昔のプロレスにおいてもトップベビーは創業社長でずっと変わらない。ストーリーに変化をつけるのは毎回新しく出てくる怪獣と外国人ヒールだ。現状に不満を持ち、あるべき理想的なビジョンを示し、意志と行動を伴っている怪獣とヒールがストーリーの前半を組み立て、正義の味方は何も言わずにただ彼らを倒して現状維持に努める。新日本でいうと、藤波辰巳選手や棚橋選手のように、どんなに長くしゃべっても、時候のあいさつ以上の意味がない選手がキャラクター的にはベビーであり、現状をより良くしようと色んな改革案を出すような中邑選手のようなタイプはキャラクター的には本来ヒールだと思う。


それはともかく、プロレス人気を復興させるには、プロフィール写真を見ただけで、ヒールかベビーか分かるよう外国人選手のプロフィールを作り込むことが必要だと思う。昔なら、カール=ゴッチ選手は実際はドイツ人じゃないのに、プロフィール上ドイツ人にして、必殺技の名前もジャーマン(ドイツ式)スープレックスホールドと、国名を入れ、第二次大戦直後の、ヒールの条件の一つである、日本・ドイツ国籍を名乗ったわけだ。いまはみんな本当の国籍を名乗ってしまうから、アメリカとメキシコと日本のレスラーしかいないし、プロレスがたった3国にしかないローカルなスポーツだとバレて、プロレス幻想が無くなってしまっている。K−1だって日本とオランダにしかジムはないし、総合格闘技だって、日本とアメリカとブラジルとロシアにしかないのだが、オランダのジムから来てても、クロアチア生まれなら、クロアチア人として紹介することで、世界中から強い選手が集まって来ているというイメージを作り上げている。プロレスだって、ジムは日本とアメリカとメキシコにしかなくても、カナダ出身でアメリカのジムを経て日本に来ているなら、カナダ人名乗らせれば良いし、嘘でも良いからもっとマイナーな国の名前を使えとか、どうしてもアメリカ出身なら、アメリカじゃなくて「フロリダ州出身」とか「テキサス州出身」にしないと、プロフィールがみんな同じになってしまって詰らないとか思う。
http://d.hatena.ne.jp/wtnbt/20060625
に関して言うならロラン・バルトはプロレスが好きでUWFが嫌い。
…などと本当にどうでも良いことしか考えてないから俺はダメだ。