プロレス

最近分かったこと。
柔道は元々、柔術と剛術(当身・打撃)両方を含んでいて、流派ごとに試合のルールも違ったのを、統一ルールで競技化したのが投げ技中心の講道館柔道。これと相反する流派で寝技中心の高専柔道があり、高専柔道がブラジルに渡って、グレーシー柔術になった。


レスリングは相手の両肩を一秒以上床につければ勝ちになる。上半身のみを攻めるグレコローマンスタイルと全身を攻めるフリースタイルの二種類がある。
イギリスの実戦レスリングで、キャッチレスリング(キャッチ・アズ・キャッチ・キャン、もしくはランカシャーレスリングとも言う)と言われるものがある。こちらは相手の関節を極めてギブアップを取れば勝ちになる。このスタイルで有名なレスラーはカール・ゴッチ選手。このスタイルで有名な道場はスネークピッド。
キャッチレスリングを、エンターテーメント化・プロレス化したのがヨーロピアンレスリングで、日本でいうと西村修選手の無我がそれに近い。
新日本プロレスタイガーマスクブームが起きるまでは、キャッチレスリングを重視していた。元々空手出身の前田日明選手が新日本で投げ技・関節技主体のキャッチレスリングを学んで、UWFになり、総合格闘技になった。空手の打撃+レスリングの投げ+キャッチレスリングの極めが総合へつながる。


空手の歴史は柔道と比べると意外と浅く、大正時代に沖縄から入ってきた中国拳法がルーツだ。中国拳法=カンフーが、沖縄で琉球唐手(唐手の唐は中国を指す)になり、それが本州で唐手・空手になってゆく。空手は道場ごとにルールが異なり、統一ルールがないため、競技よりも武術の要素が強い。空手から分かれた流派で空道(空手+柔道の総合格闘技)、日本拳法躰道などがある。


■■/講道館柔道■■■■■■■■■■■■■■■■
柔道■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■\高専柔道―グレーシー柔術\■■■■■■■■
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カンフー―琉球唐手―空手\■■■■\■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■UWF――総合格闘技
■■■キャッチレスリング/■■■■■■■■■■■


個人的に面白いと思うのは、ボクシングとレスリングの対比で、通常ボクシングは戦っているようにみえるが、レスリングは試合を見ても戦っているようには見えず、じゃれあっているようにしか見えない。
にも関わらず、実際のケンカ・実戦において、レスリング技術の方が有効である場合が多いという見た目の実際の差が興味深い。
レスリングにおいて、相手の両肩を一秒以上地面につければ勝ちというルールは、ケンカや格闘技とはほぼ無関係に見える。ところが、目潰し・金的・噛み付き以外何をしても良いという初期UFCの試合で優勝したのはホイス・グレーシー選手で、街のケンカ自慢の殴り屋相手にほぼ無傷で勝っている。勝ちパターンはタックルして、相手の背中を地面につけて、相手の上に乗り、馬乗りになって相手の頭部を殴り、関節を極めるだけだ。ホイス・グレーシー選手がUFCに出なくなってからも、レスリングの選手が強かったりする。打撃の技術よりも、相手より有利な位置を取るポジショニングの技術が重要であったりする。
現実の街中のケンカなどにおいて、傷害罪で刑務所に入って良い前提でやるならともかく、そうでない場合、具体的には警官隊が刃物を持った犯人を取り押さえるような場合、犯人を無意味にケガさせることなく、なるべく無傷で捕まえようとするため、使われる技術はボクシング技術ではなくレスリングや柔道になる。


上半身しか攻めてはいけないグレコローマンと全身を攻めるフリースタイルでは、一見フリースタイルの方が、より実戦的な気がするが、グレコローマンのそれは、相手が武器をもっている前提で武器を持つ手を取り押さえるための攻撃であり、相手が素手であることを前提としたフリースタイルよりも、グレコローマンの方がより実践的だとする考え方もある。
レスリングは実践的であっても、ボクシングと比べて、見た目が地味で、試合を見て楽しむには、それなりの知識が要求される。UWF〜総合格闘技にかけて、レスリングの面白さを伝えるために使われた技術解説が素晴らしいと思う。ヨーロッパにおいてヨーロピアンレスリングやキャッチレスリングが地味で分かりにくいという理由で消えかかっている中、その地味な物をショービジネスとして成功させた技術解説の言語表現能力はすごいと思う。