プロレス

子供の頃、ドリフとかベストテンとか面白い番組がいっぱいあるのに
中年のおっさんは何で詰まらない野球中継ばかり見ているのか不思議だったが
さすがに最近分かってきた。
会社という組織の中で働いていると、不条理なことはいっぱい起きる。
その不条理を上手く処理するのが中間管理職の仕事で、
中年のおっさん達のメインの仕事がそれだからだ。
プロ野球など見てても、チームをいかに機能させるのか、
チームプレーとはなんなのか、見てると考えさせられる。


いまの自分の場合、新日本プロレスのチームとしての欠点に感情移入してしまう。
いま新日本では「プロレスは個人技だ」と言われているのですが、
俺はチーム競技だと思う。空中を華麗に飛ぶメキシカンプロレスの場合、
跳ぶ側専門のベビーフェイスと、跳ぶ選手を下から持ち上げ、より高く跳ばし、落ちてきたときに怪我をさせないよう下で受け止めるヒールの選手がいる。
フィギュアスケートでいうと、高く舞う女性の選手と、それを下から持ち上げる男性の選手のような役割分担がある。
チームとして機能してないプロレス団体の場合、華麗に跳ぶことで人気の選手を集めて試合をしたら、跳んで舞う選手を持ち上げたり受け止めたりする選手がいなくて、結局誰も飛べなくなったりする。


新日本プロレスのかつての売りであった異種格闘技戦の場合、プロレスの素人であるが格闘技の世界では名のある選手と、プロレスのプロが試合をする。プロレスの素人がプロレスをするという意味では、モハメッド=アリ選手も和泉元彌選手も同じだ。プロとしての技術は無いが客を呼べるスターと、そこまでのネームバリューは無くても、プロとしていぶし銀の技術を持つプロが組んでエンターテーメントを作る。
アイドルポップスやアイドル映画と事情は非常に似ている。
アイドル映画を作るとき、主役にモー娘とジャニーズジュニアを持ってきて、周りをベテラン俳優で固めるとしても、誰がアイドルで誰が役者で、アイドルの仕事は何で、役者の仕事は何か、全体を把握している人がいなきゃいけない。試写会や上映会や記者会見に出て映画のPRをするのは、アイドルとベテラン俳優のどっちがやった方が良いのか?や、撮影中、役者に求める演技力に関して、アイドル役者の合格点がどの辺で、ベテラン俳優の合格点がどの辺かは、分かっている人がいなきゃいけない。
が、新日本プロレスの場合、オーナーや社長や監督がコロコロ変わった結果、チームとしてアイドルが何人必要で、演技力のあるベテラン俳優が何人必要で、カメラマンと脚本家と照明と音響にどれぐらいの人員が要るのか?みたいな部分がコロコロ変わる。サッカーでいうと、フォーバックになったりスリーバックになったりファイブバックになったり、監督の方針がコロコロ変わるチームみたいな物だ。いや、方針がコロコロ変わるダメな監督なら監督を変えれば済む話だが、監督自身の首がコロコロ変わるから、現場の選手が混乱するという状況だ。
どのポジションでもある程度こなせて、かつ、どのポジションでもそのポジションだけを十年やってきたその道のエキスパートには勝てないという汎用性の高い永田選手が新日本で重宝されるのは、エキスパートを育てるだけの余裕が無い現場であることを意味している。
で、これは新日本プロレス独自の問題ではなく、会社という組織の内部で働く人間なら、特にそれが30代から50代の人間であれば、誰もが経験している不条理だし、多かれ少なかれどの会社、どの組織にもある問題だ。


巨人が他の球団からスター選手ばかり取ってくるから、走れないホームラン打者ばかりのチームになる。なんてのも、どの組織にもある話で高校野球の名門校では、日本全国のリトルリーグから四番でピッチャーばかりが集められる。
「ピッチャーばかり百何十人もそろえて強い野球チームが作れるのか?!」
と怒ってもしょうがない。リトルリーグで運動神経の良い子は皆、四番でピッチャーをやっていて、野球では誰にも負けたことがない地元のエースばかりだ。で、名門校の監督は、野球では誰にも負けたことのない四番ピッチャーしかやったことのない人間に
「お前、キャッチャー」
「お前、ライト」
とポジションを割り振らねければならない。選手のプライドを傷つける嫌な仕事だとは思うけど、じゃあ、最初からライトの専門家を連れてくれば良いかというと、そうもいかない。リトルリーグに運動神経の良いライト八番が居ないわけだ。


新日本よりNOAHや全日の方が機能していると言われているが、機能しているチームをみても感情移入が出来ない。ダメな部分をさらけ出す新日本の方が感情移入できる。


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