不景気の役割

雑誌スペクテイターのホール・アース・カタログ号で橘川さんが語っていたことは、こういうことだ。60年代の高度成長と70年代の停滞があって、それの劣化コピーとしての80年代バブルと90年代のデフレがある。70年代は高度成長によって生まれた環境破壊や貧富の差を是正する役割を担っていた。いっけん、成長が鈍化しただけにみえるが、自然環境を整え、次の成長のための負荷に耐えれる状態に持って行った。90年代は70年代と似たテーマを持っているが、そこを上手く乗り越えてないから、次の好景気に行けないんだ。


ホール・アース・カタログが70年代の雑誌で、今、読み返す意味を問うとそうなるだろうなと思う。今の日本の左翼思想は70年代に出てきて、そこから成長してない。右とか左とかてのは、好景気の思想か不景気の思想かぐらいの違いだとして。夜はしっかり寝ないと、昼間働けない。バックミンスター・フラーの建築もホームレスのための家みたいなところがあって、雨風しのげるけど保温性はないテントみたいな奴で保温性は寝袋に頼る。携帯性や移動性重視でキャンピングカーやトレーラーハウス、いまでいうモバイルハウスのさきがけ。ユニットバスもフラーの発明らしい。


住み心地でいえばフラーの家より普通の家の方がいい。不景気の思想はどうしても明るい未来を語る形にならない。フラー自身も金がなくて普通の家に住めない時期があった上での建築だという。何千万もする家を買えなきゃホームレスになるしかないんじゃなくて、その間のグレーゾーンを埋めて行く建築も建築業界の最先端らしい。もう一方の先端は好景気を前提とした、ショッピングモールの建築で、店の売り上げを上げる建築家。


立花隆の「文明の逆説」は70年代に書かれた暗黒未来論と言うか、環境破壊や核戦争によって人類が滅亡する話を科学的データをもとに書いてて、データ自体は古くて役に立たないが、あの時代の雰囲気は伝わってくる。外国だとローマクラブの「成長の限界」が類書らしい。雑誌掲載が70年単行本が76年、文庫本が84年。いまなら許されないような差別的表現もあって時代を感じさせる。

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希少価値のあるレアアースを掘り起こすと重金属が地表に出るので、農作物に悪影響が出るとか、シェール石油を掘ると、地下水と混じるので水道水にライターで火がつくとか言い出したとき、油田では飲料水を輸入しなきゃいけなくなって、石油も水もリッター100円で日本の地下水が外国からは油田に見える、てのもあながち嘘じゃない。熱帯雨林並の降雨量。周りが海で湿度が高い。太平洋と日本海のあいだで断面図を書くと、山型になってて、雲が移動する時、山に引っかかって雨になる。真っ平らな大陸だと雲が通り過ぎる。


景気刺激策で中東戦争にガンガン介入して、イケイケドンドンだったブッシュジュニアから、反戦オバマになって、面白かった話。中東戦争にアメリカが介入するようになったきっかけは、70年代にアラブが石油輸出規制かけてオイルショックになったとき、産油量世界一のサウジアラビアの機嫌をとって石油を売ってもらわなきゃいけなかったから、スンニ派=サウジ側について、シーア派=イラクを叩いた。今はシェール石油で自給出来るから、その時の事情もバラして良い。みたいなこと言ってて暴露しちゃったなと思った。