格闘ブーム後のプロレス

http://d.hatena.ne.jp/kidana/20060509
2ちゃんねるプロレス板をみていると、そこで人気のあるプロレスと、私の好きなプロレスのスタイルが違うことに気づく。
2ちゃんでは、ルチャの最高峰の選手がヘビー級のチャンピオンになると叩かれる。(例:丸藤選手)棚橋選手に対する批判も決め技が、スリングブレイドというルチャの技だという批判だ。ヘビー級のチャンピオンでなければ賞賛される選手が、ヘビー級のチャンピオンになったとたん批判される。
ヘビーのチャンピオンは強さの象徴であり、体がでかくて、ハードタッチで、エンタメ脳の少ない選手が期待されるらしい。(例:小橋選手・三沢選手・ジャンボ鶴田選手・天龍選手・長州選手・橋本選手・小川直也選手)
同じくルチャスタイルの武藤選手や藤波辰巳選手がヘビーのチャンピオンになったときも批判を受けたらしい。
ファイトスタイルで言うと、WJ・ロックアップ・長州力系の動きで、体がデカイ選手という条件がヘビーのチャンピオンに要求されるようだ。ヘビー級のチャンプは強さの象徴として居ればいいのであって、良い試合や面白い試合は出来なくて構わないらしい。。。


また、金本選手・永田選手というファイトスタイルがUWFの選手も人気がある。確かにハードタッチで、安定感・表現力がある。個人的にはワンパターンだと感じるのだが、ハズレがないというのは確かにそうかもと思う。


個人的なプロレス観でいうと
格闘技ブーム(PRIDE、K-1)→WWEブーム(TVエンタメ)→インディブーム(種明かしエンタメ)
という流れを感じていて、格闘ブームでプロレスラーは弱いとなって以後、プロレスに強さを求める人はいなくなって、エンターテーメントとしての面白さがあれば良いのだと思っていたがそうでもないらしい。
WWEがテレビ中心のプロレスビジネスを作ったときに、蝶野選手・武藤選手辺りが日本で同じことをしてくれないかと思ったが、出来ない事情もなんとなくわかってきた。

  • テレビ中心のプロレスをするとき、生放送でないとまずくなる。試合結果がネットやスポーツ新聞に出た後テレビ放映では視聴率が取れない。
  • 生放送だと、CM中リングの上や会場の時間の流れを止めて、音楽やプロモビデオを流してCMが終わるのを観客もレスラーも一緒に待たなくてはならない。
  • CMに入る直前で試合が決まるのが何度も続いたり、フィニッシュの必殺技がカメラの真正面ばかりだと、プロレスに台本はありますと公表しているのと同じで、CM中に試合の流れを止めて待つスポーツはプロレス以外ありえなくなる。
  • テレビ的に観客の歓声や盛り上がりを映したいので、試合前にお客さんを入れて、拍手やコールの練習をすることになる。(「笑っていいとも」などの番組では普通)
  • テレビ的に狙った笑いでなく、演者のミスによる笑いが起きた時、笑ってはいけない場面で笑わないお客さんが必要になる。
  • 結果、公開録画に参加する一般観覧者はファンクラブに入っている事情の判ったコアなファン限定になる。(セミプロの笑い屋さんなどに近くなる)

この辺の事情を考えると老舗にはテレビプロレスは厳しいと思える。インディだと逆にそれが出来てしまうのかも知れない。


いま、エンタメプロレスと言われている物が、WWE式の物を指すのであれば、日本ではどの団体もそれに手を出してすらいないと思える。むしろ、強さを売りにしたヘビー級のプロレスが格闘技ブームによって泥を塗られ評価を落としたと同時に、昔からのジュニアの試合がエンタメとして相対的に評価されているのだと感じる。


永田選手の試合を見ると、表現力はあるけど、オリジナリティがあるように思えない。日本のメジャー団体(新日本・ノア・馬場全日・UWF)の人気選手の動きをそのままやってるように思える。
蝶野選手の動きはオリジナルに見えるが、プロレスに詳しい人に聞けば、ルーツはアメリカのプロレスのシナリオや動き+ドイツのキャッチレスリングの動きであるらしい。
どの世界でも百%のオリジナルというのは中々なくて、ルーツはあったりするのだが、いま日本で人気のあるものをそのまま持ってくるのと、日本ではあまり知られていないアメリカやドイツのプロレスを輸入&加工するのとの違いは大きい。
みんなが知らないマイナーな所から持ってきた方がオリジナルに見えるという話で行くと、ヨーロピアンレスリング系の動きはオリジナルに見える。個人的にはヨーロピアンレスリングという言葉の中に、ヨーロッパのガチ格闘技のキャッチレスリングの意味は含めたくない。キャッチレスリングから派生しているが、多少エンターテーメント寄りになったプロレスがヨーロピアンレスリングで、そっち系の代表的な技がローリングクレイドルだ。
ルチャのように女の子がキャーキャーいうようなカッコ良い技でなく、ハードタッチのように男の子が喜ぶ物でもなく、アメリカンプロレスのように選手と客席の間にコール&レスポンスが成り立つ物でもなく、見たことがない不思議な動きに客席が戸惑い、意味が分からないといった感じであっけにとられる動きが多い。現実的には相手の協力なしに成り立たないが、理にはかなっている動きが多い。SFでいうタイムマシンや巨人の星でいう消える魔球みたいな物で、光より速く移動すれば時間が逆に進むとか、ボールがホームベースの直前で落ちるので砂埃に隠れて消えたように見えるとか理屈はある。
UWFからハードタッチを除いて、不思議度を増したような、日常生活の中で突然、無音のパントマイムや手品をされたような変な気分になる。ヨーロピアンなプロレス団体無我に、リングアナのケロちゃんや西村選手といった理論を説明する人が多いのも特徴だ。


逆にロックアップの場合、理屈を説明する人はいない。UWFがキャッチレスリング+キックボクシングだったとすると、ロックアップはアマレス+空手(力道山の空手チョップ系)+相撲(天龍選手系)のような気がする。昔は長州選手の横に馳選手という理屈を説明する人がいたが、いまはいないので、そこが分かりやすさのレベルで損している気がする。スネークピッドジャパンとか元U系は意外に理屈っぽく、理論的なオタクが多いイメージだが、ロックアップは、ごちゃごちゃ言わんと根性見せたらええんじゃー的なヤンキーノリなんだと思う。押されたら、押し返す、殴られたら、殴り返す、テクニックとか戦術とか訳わからんことごちゃごちゃぬかすんじゃねぇーというノリだと思う。