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嫌いなタレント第一位は、好きな悪役第一位

お笑い芸人としての田中みな実が好きで、特に「女子アナの罰」が好きなのだが、田中みな実のやっていることは1980年代の松田聖子と同じポジションで、ぶりっ子ではあるだが、目的が「自分をかわいく見せる」とか「自分の好感度を上げる」とかでなく、笑いを取るのを目的にしている。80年代の音楽コント番組で、松田聖子は「こういう媚び媚びの女の子っているよね」というあるあるネタをやっていた。媚びる女性を演じてツッコむノリツッコミをしていた。

1970年代の嫌いなタレントを見ると、当時はサスペンスドラマなどで連続強姦殺人犯を演じるような悪役の男性俳優が多かった。当然だが、その俳優さんが強姦や殺人を犯しているわけではない。仕事として犯罪者役をしているだけだ。あの時代の人達は、まだメディア慣れしてなくて、ドラマと現実の区別がついてなかったのだと、思いがちだがそうではない。アンケートで「嫌いなタレントさんは誰ですか?」と聞かれて、回答が義務付けられているとして、人間は面識が無い人の悪口は言いたくない。直接会ったこともないのに一方的に悪口を言って、その人を傷つけると、自己嫌悪におちいる。本当に嫌いなタレントさんの名前は中々出せない。悪役や嫌われ役をやっているタレントさんの名前なら、自覚的に嫌われ役をやるぐらいの人だから「嫌いなタレント」に名前を出しても許してくれそうな気がするから、嫌われ役のタレントさんの名前を出す。

いまの時代で言えば、嫌いなタレント部門の上位に、刑務所に入ったタレントさんの名前は出てこない。生々しく成り過ぎるからだ。嫌いな女子アナは誰ですか?と聞いたときに、嫌われ役をやっている女子アナは、田中みな実ぐらいしかいない。希少価値のある仕事をしているわけだ。

とは言え、実際お笑い芸人としての田中みな実が嫌われていないかと言えば、難しいところもあると思う。「女子アナの罰」では女子アナの中でお笑い芸人スキルが最強だったが、他の番組でプロのお笑い芸人さんと絡んだときに、厳しい場面がある。明石家さんまさんのノリツッコミは、目上のタレントさんで尚且つ、非お笑い芸人のAさんがボケた時のツッコミとして効果を発揮する。
「この間、こんな失敗をしてしまったのですよ」
とそのタレントさんが失敗談をして笑いを取りに行ったが、あまり受けなかった場面で
「何、アホなことしてまんねん!二枚目が台無しですな!」
というシンプルなツッコミでは失礼に当たるし、Aさんのファンから苦情が来る。かといって、ツッコまなければ、せっかくの面白エピソードがすべって終わる。ノリツッコミは、Aさんのボケと同じ方向性で、もっと面白く脚色して膨らませたエピソードを演じて
「こんなことしてたら、向こうから、うわぁ〜〜と来て、ぐわっしゃ〜〜ん。何やっとんねん!ゆう奴ですなぁ」
ツッコミが、Aさんでなく、自分の演技に対してなされるので、ツッコんでもAさんに対する失礼には当たらない。

田中みな実が、ぶりっ子ネタをやります。さんまさんがノリツッコミをしようとしたら、ノリの部分で田中みな実よりも面白く、よりリアルにぶりっ子をしなくてはいけない。お笑い怪獣明石家さんまと言えども、年齢・性別を考えれば、田中みな実より面白いぶりっ子を要求されるのはキツイ。かと言って、ノリツッコミを止めて、シンプルなツッコミで「なに媚びとんねん!」では当たりが強くて、田中みな実泣いてしまう。お笑いで、面白い素人(非お笑いタレントも含む)とプロの違いは、面白い素人はウケている間、ずっと同じボケをかぶせられるが、プロは、そのかぶせがすべった後のフォローとして、素人がすべったネタを振りにして、すべったネタと同じ方向性のボケで笑いを取らなければいけない。自分の得意な持ちネタじゃなくて、ゲストの持ちネタの方向性で、すべった後の空気を取り戻さなければいけない。中年男性のお笑い芸人にとって、田中みな実のぶりっ子にかぶせて、ウケなければいけないプレシャーは想像に難くない。サンデージャポンのようなVTRのみの絡みであれば、田中みな実のすべった箇所はVTRを切れば良いし、仮に切らなくてもVTRが続いている以上、ワイプの中でかぶせて場を温める必要もない。問題はスタジオでお客さんがいて、ぶりっ子をしてすべった時の対応を、女性お笑い芸人ならともかく、中年男性お笑い芸人にやらせるのか。おっさんが、ぶりっ子をしてウケるのか?

田中みな実のお笑いスキルは基本漫才のフォーマットで、田中みな実VS加藤シルビア田中みな実VSマツコ・デラックス田中みな実VSしずちゃんと、二人一組なのだが、パートナー無しの単独のラジオをやったとき、しゃべりを主戦場とするお笑い芸人にとって、ラジオの冠番組は一番力量が出るとされるのだが、お笑い芸人田中みな実を期待して聴くと、あまりのすべり方に戦慄を覚える。普通に険悪な空気のトークに凍り付く。理由は分からないが何となくしゃべり方が怖い。

田中みな実のあったかタイムは、ゲストにアナウンサーを呼んでトークなのだが、ゲストに年下の男性アナウンサーが来て、田中みな実的には、ここでボケて、ここでツッコんでと、笑いのフォーマットにのっとった振りをしているのに、アナウンサーが真面目に話を進めてしまった時の「は?(怒」という返しが、ありえないぐらい怖い。年齢やお笑いスキルに関して、自分より下と感じた人間、特に男性に対する風当たりが強いのと、テレビでは編集されているけど、テレビで(自分より格下だと感じている)お笑い芸人さんがすべった時も、同じような反応をしているのだろうなと思わせる部分。なまじっかお笑いスキルに自信がある分、他人がすべった時のフォローに行かずに、突き放す感じが怖い。