プロレス-プロ格闘技団体はTV局の子会社だった

wiki キックボクシングより
問題点
組織・選手・統括組織(タイトル認定組織)がテレビ局ごとに系列化され、それぞれ別々に存在していること(ボクシングを含む他の競技のように日本一を決めることすらできない)
興行はテレビがつくかつかないかに左右され、テレビ中継が消えるとほとんど経営が成り立たなくなる
以上二点はプロレスと同じであり、ともに競技性を無視し興行面のみが優先されるビジネスである。
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NHK-日本テレビで放送された力道山日本プロレスは、相撲の力道山が、柔道の木村政彦、アマレスの外人選手などと闘う試合で、ジャイアント馬場選手の全日本プロレスにしても、野球の元巨人軍ピッチャーである馬場選手、アマレスオリンピック日本代表のジャンボ鶴田選手、相撲の天龍源一郎選手、輪島選手などが売りで、新日本プロレスも、猪木選手の異種格闘技路線、柔道のウィリアム・ルスカ選手、ボクシングのモハメド・アリ選手、空手のウィリー・ウィリアムス選手らとの闘いが売りだった。TV局主導で作られた当時のプロレスを考えると、TV局サイドとしては、相撲のトップと柔道のトップが闘ったら、どっちが勝つか?ボクシング対空手だとどんな試合になるのか?そういう興味を満たす舞台としてプロレスを考えていて、プロレスラー対プロレスラーの試合をするプロレス中継は、TV局としてはいらない訳です。TV局が各プロレス団体の株を所有し、株主として、親会社として振舞う時、子会社であるプロレス団体に要求するのは、そういう試合であったりする。


少し脱線するが、ここ最近の2ちゃんねるプロレス板を見ていると、DDT(飯伏選手)・ドラゴンゲートのファンが、メジャープロレス団体(新日・ノア・全日)の悪口を書いて、暴れていたりする。DDTドラゴンゲートを推す側の言い分は非常に良く分かる。日焼けして髪を脱色したイケメンが、コーナーのトップからクルクル回りながら跳ぶ、ジャニーズJr.みたいなプロレスは、女の子からキャーキャー言われて格好良いし、ビニール製のラブドール相手に試合をして負ける飯伏選手も、冗談として非常に面白いし、ガチを名乗るメジャー団体の試合よりも皮肉が効いている。メジャーのプロレスは40代50代の太った背の低いおっさんが、脂汗かきながら、のろのろ動いているだけだろう、こんなのをテレビで流すからプロレスが馬鹿にされるんだ、という彼の批判は非常に良く分かる。ところが、彼の言い分は常に観客視点で、選手や団体運営に携わるスタッフ視点で見たとき、それで良いのか?という話になると、とたんに失速する。


DDTドラゴンゲートのような空中を舞う試合は、ヒザに負担が掛かる。初代タイガーマスクを見ても、そのファイトスタイルで、ベストコンディションを維持できるのは、精々3年ほど、跳ぶ回数を減らしながら、ごまかしごまかしやるにしても、10年前後の選手生命になる。若くてカッコいいハタチの頃に、そのファイトスタイルでデビューして、30歳でヒザに故障を抱えて引退、引退後は障害者としてプロレスとは何の関係もない仕事をしていく、それでその選手は幸せなのか?満足なのか?プロレス団体の運営者は、子役やアイドル専門の芸能事務所みたいに、ルックスが良くて身体能力の高い若者を搾取して、年取ってルックスと身体能力が衰えたら、その後の彼の生活には責任を持たずに使い捨てて、また新しい若い子を集めてくる。そのビジネスモデルで良いのか?会社に貢献したスター選手は引退後もスタッフなりプロモーターなりしながら、一生食っていけるシステムを作らなくて良いのか?DDTドラゴンゲートはまだ歴史の浅い会社で、元々プロレス学校の生徒だったり、ただのプロレスファンだったりして人たちが、ノーギャラで良いから、趣味でプロレスをやりたい、金のことを考えずにプロレスを楽しみたい、みたいな所から始まっているので、高齢者の少ない今は良いかも知れないが、この後どうしていくのかという話になると、実はメジャー団体とあまり変わらない道を進む可能性が高い。


プロレスラーの選手としてのピークは何歳ぐらいであるべきなのかという問いが、ここにある。蝶野選手が新人の頃、先輩レスラーから選手のピークは40代だと言われたらしい。高山選手がPRIDEなどに出ていたとき、20代のレスラーをトップに据えなきゃダメだと言っていた。プロレス以外の他の競技を見ても、スポーツ選手の体力的・身体能力的なピークは20代で、40を過ぎたおっさんがトップにいる競技なんてない、一番元気で体力のある20代をトップにもって来るべきだと、当時若手扱いだった高山選手は言う。40代ピーク説の主な根拠は、こういったものだ。20代の無名の新人がトップに立っても、知名度がないからチケットが売れない。お客さんは自分達が若い頃活躍していた選手を観に来る。その選手と一緒に歩んだ10年20年の思い出をダブらせて試合を見て感動するわけで、デビューしてすぐの新人には、お客さんの思い入れがない。若くてカッコいいアイドル歌手が良いのか、ネームバリューのある往年のナツメロ歌手が良いのか。


TV局視点でプロレスを見たときに、各格闘技で名をなしたトップ同士の試合を放送したい。アマレスや柔道で無敗の金メダリストや大相撲で一時代を築いた大横綱とかだ。アマレスの選手としてのピークは20代前半で体力が充実してきて、技術的なものが身について完成されるのが30代前半、頂点を極めた選手が引退するのが40歳前後だとすると。各個別の格闘技で頂点に立った選手は、そこそこ歳を取っているわけです。一度世界大会で優勝したぐらいじゃなくて、何度も世界大会で頂点に立っている超有名選手とかになると、30代後半、40手前になってくる。そういう選手をプロレスに引っ張ってきた時に、同世代で話があってとなると、他競技と接点のある40代のプロレスラーとかになってくる。


メジャープロレス団体の新人募集欄を見ると、18歳以上、高校卒業後の人間が対象になっている。高校卒業後すぐにプロレス団体に入った選手、鈴木みのる選手のキャリアをみると、高校のアマレスで全国大会二位になっていて、アマレスの強い大学から引っ張られたり、オリンピック日本代表候補として海外遠征に連れていかれたりしている。武藤選手が柔道でオリンピック日本代表候補だったとか、菊地毅選手が大学時代にアマレスの全国大会で優勝したとか、そういうランクの人がいっぱいいる。問題は、高校や大学で日本一になっても、オリンピックに出れていない。もっと上の年齢で日本一にならないとオリンピック日本代表にならないのだが、それよりも先にプロレス団体に入ってきている。プロレス団体の大株主・親会社であるTV局視点だと、高いお金を払って試合を組む大物格闘家、という実績はオリンピックでメダルを取っていれば、充分その資格はある。メダルまで行かなくても、オリンピック日本代表に成っていれば、正式に日本一を名乗れるし、実績として認められる。高校で日本一だと、実績にならない。でも選手からすると、プロレスラーに憧れて18で入ってきたから、オリンピックに行けなかったのであって、あのまま続けていたら、オリンピック行けてたよね、だって、あのとき俺に負けた選手が日本代表じゃん?とかあるわけです。プロレスラーの選手としてのピークを20代だとするなら、18とかハタチとかでプロレス団体に入ってこなければいけないので、オリンピック日本代表に成りようがない。


会社という組織は、経営トップ-中間管理職-現場という三層構造になっているとして、プロレスの場合、社長-道場長-現場という組織になっていて、中間管理職の位置に、山本小鉄長州力・藤原組長らが各時代にいて、ある種、現場の不満の聞き役、労働組合の長みたいな位置で、サボっている選手を叱り、がんばっている選手を褒め、成果主義でなく、努力主義で、能力のある人には能力があるなりに、能力のない人には能力がないなりのパフォーマンスを引き出すわけです。現実のビジネスは、その成果が偶然や社会の風潮や一時期の流行などで決まるが、それでは現場のやる気がなくなるので、努力やプロセス重視した教育を行なうわけです。終身雇用で一生お前達の面倒を見るからな、いまは安い給料だけど、年功序列で毎年ベースアップして、退職金もいっぱい払うからなとか言うわけです。そう言わないと下の人間はついてこないから、何があってもお前達を守るという態度を取る。でも、経営トップ、もしくは親会社であるTV局サイドからすると、オリンピックにも出てないような選手は商品価値がない。このダブルスタンダート、人情味あふれる中間管理職に守られた家族主義的な暖かい労働環境と、寒風吹きすさぶ市場の論理とのギャップが、プロレス業界の中に存在して、それがいま自分が置かれている状況ともかぶっていて、感情移入するきっかけになっている。一時期の新日本プロレスは派閥争いや何かがあって、社内の指揮系統が無茶苦茶だったわけです。蝶野選手がどこかで言っていた話ですが、橋本真也選手が、若い頃、Aさんに可愛がられていて、よく飲みに行ったりしていて、Bさんからメシに誘われた時に、AさんとBさんが仲悪いという事を知らずに、Bさんに「Aさんに良くしてもらっているんですよ」と言ったら、AさんとBさんの両方の派閥からハブかれたとか、そういうの聞くとすげー骨身にしみる。現場からすると、一個案を通すのに直属の上司である、中間管理職のハンコ一個取れれば、案が通ると思うじゃん。でも、新日とかだと、株主にゲーム会社やTV局があって、各地方にプロモーターがいて、提携しているプロレス団体がいくつかあって、その全部に許可取らなきゃいけないとかになってくると、何個ハンコいるんだよとかさ、あると思うんだ多分。社内の意見調節だけじゃなく、社外的な利害の調節とか言い出すと提携先が多ければ多いほど大変なんだろうなとか。負けた選手が髪を切られる髪切りマッチにしても、グッズの絡みがあるから人気選手が髪形変えれるわけないだろとか言われてるの見ると、大変だなぁと。