えりあし

よく3才ぐらいの子供で、後ろ髪と前髪だけ長い子がいて、親を見ると大抵ヤンキーなのですが、あの子のえりあしがいつ切られるのかに、興味がある。
子供というのは、たいてい親のいうことを正しいと信じて育つわけですが、ある日突然、自我が芽生えて、親に反抗し出すわけです。
「僕のえりあし、おかしくない?」
それまで、えりあしの話なんて一切してこなかったのに、急にえりあしを切りたがる。これは子供にとって一番最初の自我の芽生えであり、反抗期であるわけです。一緒に遊んでいる近所の子に影響されて、えりあしを切りたいと言い出す。
「ひろくんも、ともちゃんもみんな短いよ。僕だけだよこんなの」と言い出す。
「よそは、よそ。うちはうち。各家庭にはそれぞれ事情があるの」
と言っても納得しない。ひろくんところは公務員。ともちゃんのお父さんは元いじめられっこ。うちのお父さんは元特攻隊長や。特攻隊長の息子のえりあしが短いとなったら、近所の良い笑いものや。意地でもえりあしを切るわけにはいかない。でもな、やっぱ血は争えない。親譲りの意地張って、自分ではさみ持って髪を切ってしまった。そんな子が大きくなると、また自分からえりあしを伸ばし出したりする。そうやって子供は大きくなってゆく。