岡村隆史のバルス

お笑い芸人の岡村隆史が、ラジオで失言したことに関して、様々な人が様々な立場で語っていたが、自分と同じ見方をしている人を見かけなかったので、一応書いてみる。

 

バルス」はアニメ「天空の城ラピュタ」に出てくる破滅の呪文であり、TV地上波で再放送される際、アニメのバルスに合わせて、ファンが一斉に「バルス」とツイートすることが恒例となっている。何万人の一斉ツイートで、本来、存在しないはずのアニメ中の造語である「バルス」がツイッターの注目ワードランキングで上位にランキングされることとなる。

 

バルスはロックコンサートにおけるコール&レスポンスであり、視聴者投票のDボタンやニコニコ動画における「WWWW」「8888」みたいなものだが、同じようなシステムが岡村隆史のラジオにもあった。芸人岡村がボケると、放送に合わせて、視聴者が

「何言ってるねん!」「ほな、あほな!」「なんでやねん!」と何万人が一斉にツイッターでツッコむ。ラジオを聴く側はツッコミワードを携帯に入れて、ラジオを聴いて、ボケに合わせて軽快にツッコむ。そういう視聴者参加型の文化が岡村隆史オールナイトニッポンにはあった。

 

ツッコむ側は岡村隆史の熱心なファンであり、リアルタイムでラジオを聴いて、ツイートをするのだが、ラジオ局の上層部はそれらのツイートの数を、クレーム・炎上の件数としてカウントし、これらの数のクレームが来ましたと、定期的にラジオ内で報告されていた。ツイートをしている人達のほとんどは、岡村隆史に対する共感・同意の下でのツッコミであり、ラジオ局内でも現場スタッフは、そのことをよく理解していたが、ラジオ局内でも上層部と現場との温度差は感じられた。

 

元々、岡村隆史オールナイトニッポンは、ナインティ―ナインのオールナイトニッポンで、ボケの岡村、ツッコミの矢部で、二人組のラジオだった。岡村が毒舌でおかしなことを言う。矢部がそれに「岡村さ~ん、そんなこと言うたらあきませんよぉ~」とツッコむ。岡村が火を付けて、矢部が火消しをして、マッチポンプで成立する笑いだった。

 

色々あって、岡村一人のラジオに成った。岡村がボケても、誰もツッコまないので、漫才好きのファン達は、自らツイッター上でツッコむようになった。ツッコミ=クレームが来るので、ボケてはいけないという空気がラジオを支配して、2時間ボケ無しで真面目な話しかしないことも多くなった。

 

岡村が病気で休んでいた時、矢部一人時代のラジオはゲストに後輩の芸人(漫才師でボケ担当)を呼んで、ボケとツッコミで矢部はラジオを回していた。矢部が休み、岡村一人に成ったとき、後輩でも放送作家でも良いから、ツッコミの出来る相手を入れて、ラジオをやるべきだった。