TVドラマ版「翔んだカップル」

自分にとって、そういう世界に見えていたのがTVドラマ版の翔んだカップルで、柳沢慎吾のデビュー作。原作は週刊少年マガジン連載の漫画で、ドラマは原作二週分を一週で放送するから、すぐにドラマが追い付いて原作切れになり、ドラマオリジナルストーリーが展開される。自分が見てた翔んだカップルは原作無視で、ドラマですらなく、アドリブ・コント番組で「おれたちひょうきん族」みたいな番組だった。

主な登場人物が、4名。何をやってもカッコイイ男女と、何をやってもダメなカッコ悪い男女の4名で、同じテーマ、同じ振りでカッコイイ側がカッコ良く課題をクリアした後、カッコ悪い側がダサくカッコ悪いことして笑いを取る形式。オチを担当した柳沢慎吾が、翔んだカップルの後番組「ふぞろいの林檎たち」でも主役を務めた。

漫画の翔んだカップル自体が、共学進学校を舞台にした受験戦争漫画で、主な登場人物が受験を苦に自殺したりする。ふぞろいの林檎たちも、学歴社会を扱ったドラマで、三流大学に入った冴えない男3人が、出身校を偽って女子大生をナンパしたりする話だ。

翔んだカップルがTV放送されていた頃、自分は小学一〜二年生で、何をやってもダメないじめられっ子がクラスにいて、そいつと一緒にそいつの家でドラマを見ていた。そうじの時間に、そいつがぞうきんをしぼるんだけど、しぼって広げたぞうきんから、ぽたぽた水が垂れてて、女子の班長に「何でちゃんとしぼれないの!」と怒られているような奴だった。外見や声を聞いただけで、ぼ〜〜っとして何もできない奴と判る雰囲気を持った奴で、そいつと自分が、クラスの何をやってもダメな奴の2トップだった。そのダメな奴が「僕の一番好きな番組なんだ」と言って家に呼んで見せてくれた番組が翔んだカップルだ。

自分の家は母が専業主婦で、家には妹や弟がいて、いつもテレビや電気がついてて、なんか騒がしかったが、彼の家に行くと、両親は共働きで、兄弟もいなくて、家の電気は消えていて、特に電気をつける様子もなく、夕方5時の薄暗い台所で、お湯を沸かしてカップ麺に注ぎ、フルーチェに牛乳をかけて食べ始めた。ベランダの外では夕焼け小焼けが流れて、家に帰るよう放送が流れていた。テレビの中では、何をやってもダメな奴が、ダメであるがゆえに笑いを取り、爆笑を巻き起こしながら輝いていた。ダメな奴がダメさを武器に輝いているテレビの中の世界をのぞきこみながら、コタツに入って薄暗い部屋でカップ麺を食べていた。
ビデオ化・DVD化されていないと聞いたが。久しぶりに見ても意味が分からないドラマだ。
https://www.youtube.com/watch?v=6sLvhX4yBxI