関東の笑いと関西の笑い

第二次大戦前のコメディアンで言えば、劇場で人気が出た後、サイレント映画(視覚)を主戦場にするか、ラジオ(聴覚)を主戦場にするかで、大きく分かれた。前者が関東の笑いで、形態模写・物真似・リアクション芸、「とんねるずの細かすぎて伝わらない物まね」などで、後者が関西の笑いで、トークや漫才などになる。

リアクション芸は、熱くない熱湯に入って、熱湯に入った人の熱がる姿を模写をするのが芸だ。コント55号で欽ちゃんが二郎さんをいじめるときの、二郎さんのリアクション芸、ビートたけしたけし軍団をいじめるときの軍団のリアクション芸、タモリのイグアナの物まね、初期とんねるず11PMの物まね。


別の観点から関東の笑いと関西の笑いの違いを書くと、関西の漫才(やすしきよしダウンタウン)は演者が幼馴染みでお互いのことをよく知っている前提で話される。やすしきよし里帰り放送室
例えば、
A:俺、同性愛者やねん!
B:嘘つくなやボケ!(と言ってAを叩く)
AとBは幼馴染みだから、相手の冗談を冗談だと見抜いて「嘘つくなや!」とツッコめる。関東のお笑いの場合、地方から出てきた社会人同士が、初対面で話す前提になる。会社同士の付き合いが30年以上もあるお得意先の営業マンだが、担当者が変わったため、個人としては初対面の相手と話すシチュエーションになる。
A:私は同性愛者なんですよ。
B:奇遇ですね。私も同性愛者です。
関東のお笑いだと、会社同士の付き合いが長く、仕事上の取引先なので、相手を怒らせてはいけない前提で話す。Aが冗談のつもりで「私は同性愛者だ」と言ったら、Bは自分が同性愛者で無くても、相手に話を合わせて「私も同性愛者です」と答える。お互い異性愛者で同性愛者は苦手だと思いつつ、気まずくならないように同性愛者として、好みの同性のタイプを熱く語り合う。そこへ、AとB両方のことを昔からよく知る上司がトイレから戻ってきて、「私の方がより同性愛者的だ」と語り合う二人を、遠目に眺めて変な空気になる。シティボーイズ(「クレーマーに謝罪」参照)から東京03(「聞こえちゃった悪口」参照)に連なる、オフビート系のコントは大体こういう感じの状況設定になる。建前でつながる二人がいて、それを眺める第三者がいる。建前がどんどんおかしな方向へ行き、第三者の視線に耐えられなくなる。


地元で生まれ、地元で育ち、親同士ですら幼馴染みな関西の環境と、日本全国から人が集まってくる関東では、コメディの前提条件が違ってくる。関西の場合、話している人間が幼馴染みである以上、話の内容を聞いて、面白ければ笑う。関東の場合、まず相手が何者で、どういう人なのかが分からなければ、話すら聞かない。自分の外見をイジるというか、自分の見た目が、何か劣った物に似ているのを受け入れて物まねをして、面白い奴だなと思われないと、話を聞いてもらえない。


こっから、演者の人数、ピンとコンビとトリオの違いについてに話を持って行って、コメディエンヌとしての田中みな実松田聖子河合奈保子とかについて書きたいが上手くまとまらない。