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美術手帖「第15回芸術評論賞」

公式 http://www.bijutsu.co.jp/bt/GH15_kekka.html
ポストスーパーフラットアートスクール成果展の最終日が終わった時刻に、携帯電話でツイッター見ていた黒瀬さんが大騒ぎしていて「美術手帖が本気で敵に回った」と言っていた。何のことか聞いたら、美術手帖主催の美術評論コンテストで、一席二席が両方とも黒瀬批判だという。一席取ったgnck(ジー・エヌ・シー・ケイ)さんは、年季の入った昔からの黒瀬批判者で、gnckさん的には梅ラボさんを黒瀬さんに取られたという私怨があるらしい。黒瀬さん的には、gnckさんと梅ラボさんはそこまで深いつながりはなかったという。


二席を取った塚田優(つかだ・ゆたか)さんの評論のタイトルが「キャラクターを、見ている」。これは黒瀬さんの実質的デビュー作で、NHK出版時代の思想地図vol.1 http://www.amazon.co.jp/dp/4140093404 に掲載されている「キャラクターが、見ている」をモジっている。黒瀬陽平のデビュー論文に対する批判だ。美術手帖が選んだ美術評論の入選作二作が両方とも黒瀬批判だと聞いて、俺は黒瀬さんが一夜にしてスターになったのを感じた。美術手帖黒瀬陽平を乗り越えるべき大きな壁として設定している。30年ぐらい前に活躍した偉大なる過去の巨匠みたいな扱いをしている。三十一歳の黒瀬陽平が、黒澤明大江健三郎に見えてきた。黒瀬陽平というのはクレメント・グリーンバーグと同世代で、ロザリンド・クラウスのことを「若手」と呼びだすんじゃないかと思った。疲れた顔で軽く凹んでいる黒瀬さんに「天下取ったじゃないですか!」と興奮気味に話すと「そんなんじゃないよ」と言われた。


私が最初に美術手帖を見た高校時代、1990年頃の美術手帖はカラーページが4ページほどしかなく、白黒のざら紙に活字印刷の雑誌で、図版は少なく美術と何の関係もなさそうな哲学論文なんかも載っていた。いまのカラー写真が豊富で、抽象画をめぐる哲学論文ではなく、サンリオ的な具象画を描く作家の読みやすいインタビュー集が載ったポップ路線は、ネットでは「椹木路線」と呼ばれている。実際には椹木野依さんが路線を変えたというより、時代の要請や編集スタッフの方針で変わったらしいが、変化の象徴として椹木さんの名前はよく使われる。椹木さんはHIP-HOPの音楽評論もやっていて、ラッパー二人が出てきてお互いの悪口(DIS)を言い合って勝ち負けを決めるMCバトルにも理解のある人だと思う。ビーフ(因縁)のある仲の悪い二人がステージの上でトークバトルするのをショーとして見せる文化圏の人が、黒瀬批判に舵を切っている。話題も波風も何もないところで、みんなで仲良くニコニコしていてもしょうがないから、話題と観客を生み出せる相手にバトルを仕掛けて業界を盛り上げようぜという話だと思う。


ここ最近の黒瀬さんはバトル形式のトークショースキルが、すごく高いわけですよ。藤井光×黒瀬陽平https://www.facebook.com/yykurose/posts/293424850817550、じゃぽにか×カオスラウンジhttp://www.ustream.tv/recorded/48001363 基本的にはツイッターフェイスブックで絡みながら、ネットが炎上し、話題が拡散した状態で、トークショーのお客さんを集めて、トーク原稿の掲載先を募り、仕事につなげるパターンだがカオス*ラウンジ*ラジオhttps://soundcloud.com/umelabo/chaosra004で、黒瀬さんがファミリーマートのおにぎりの海苔に対して批判し始めた時には、ファミマのおにぎり、商品開発担当者とまでトークショーしたいのかと。批評家としての守備範囲の広さに驚愕したわけですが、第15回芸術評論賞受賞論文が掲載された美術手帖10月号http://www.bijutsu.co.jp/bt/定価1600円+消費税の発売日が9月17日。明けた9月19日には黒瀬さんがさっそくツイッターで塚田優氏批判を展開です。

「いまさらながら、話題のBT芸術評論賞の次席に輝いた、塚田優さんの論考「キャラクターを、見ている。」読みました。 率直に言って呆れました。面白いところがひとつも無い。」

「ぼくが「キャラクターが、見ている。」を書いたのは、こういう「アニメイトすることの快楽」だけを繰り返し謳い上げるだけの凡庸な「表現論」が嫌で、もっとキャラクター表現の固有性に迫った表現論が読みたい、と思ったからこそなんだけど、こういう風に仮想敵にされるとは。」

「だいたい、塚田氏が強調している「キャラクター化を逃れる描線」みたいなものに価値を置く考え方は、これまでもアート・アニメーションなどの非商業アニメでは主流だし、傍流でもなければ抑圧されてもいませんよ。むしろ紋切り型と言っていい。」

「塚田氏は、ぼくのような萌え絵に偏ったキャラクター分析を仮想敵にしようとするあまり、現状認識や論の出発点を間違えてしまったのではないか。」

「あと、塚田氏の論考は「二次創作」というテーマが全く視野に入っていない点が致命的なのではないか。従来のキャラクター論を「所有するもの」か「超越的なもの」としてしかキャラクターを論じていない、と批判するのは、塚田氏自身が二次創作についてよくわかっていないからだと思う。」

黒瀬さん的に論争の準備は万全だと。美術手帖が月刊誌である以上、炎上させてトークにつなげるなら来月号が出る前にやらなきゃいけない。じゃないと美術手帖10月号の売り上げに貢献できない。しかもgnckさんとのバトルの方が古くからの付き合いがある分、やり出したら盛り上がるわけで、そうなると、もう塚田さんの出番がなくなるので、先に塚田さんが喧嘩売らなきゃいけないわけですよ。店頭に月刊誌が並ぶのは一か月間だけ。そのうちの後半はgnckさんの持ち時間だとしたら、正味二週間ほど。盛り上がりの成否は、論点の設定段階でほぼ決まるわけで、どの点において対立しているのかを明確にしなきゃいけない。出来れば学術的に意味のある所まで掘り下げられる有意義な論点で、なおかつ広く周囲の関心を引き付けられるようなテーマを設定したい。


まあ、大変だよな。