マサ斉藤がアメリカの刑務所に入った理由

このブログに「プロレス 面白い話」で来ている人が複数いて、そのキーワードの他のサイトを見ると、あまりにぬるかったので、何か書いてみる。


マサ斉藤というアマレスでオリンピックに出た日本人レスラーがいる。プロボクシングで激しい試合を何年にも渡ってやり続けた世界チャンピオンなどは、後年脳への障害が発生してパンチドランカーになり、晩年、言語がまともにしゃべれなくなる場合がある。アマレスの場合も床に投げたり、投げられたりする競技なので、頭部を床に強打することも多い。朝から晩までスパーリングをした優秀な選手ほど、パンチドランカーになり後年になって言語障害が出る。一般的に言って、アマレスで優秀な成績を収めてプロレス入りした選手は、ボクシングのガッツ石松選手のようなアホキャラであることが多い。(例:中西学選手、菊地毅選手など)


マサ斉藤選手が悪役レスラーとしてアメリカ遠征中、刑務所に入っていて、出所後、「獄門島」と名乗っていた。これは有名なエピソードで、何度も雑誌のネタになったり、実録漫画になったりしているのだが、毎回話の細部が異なっていて、何が事実なのかはよく分からない。


いくつかバリエーションがある中で一番面白かったエピソード。マサ斉藤がアメリカで悪役レスラーとして各地を回っていたとき、仲間の悪役レスラー達とレストランで食事をしていた。そこへ散弾銃を持った強盗三名が入ってきて、レジから金を盗み始めた。強盗の隙を見て、マサ斉藤は強盗につかみかかり、銃を取り上げると、仲間のレスラーと一緒に強盗を殴り倒した。しばらくすると、通報を受けた警察が来て、事情聴取が始まった。警察の話によると、マサ斉藤には過剰防衛の疑いが掛けられているようだった。警察に連れて行かれたマサ斉藤は戦意を喪失した強盗を殴りすぎた疑いで深夜まで尋問を受けた。夜遅く帰宅したマサ斉藤は、ひどい目にあったと思いながらベッドに付いた。次の日の朝、目が覚めると家の前にパトカーが止まっていて、昨日の警官が来ていた。マサは「また、過剰防衛の件ですか?」と聞いたら、警官は「いや、今日は無銭飲食の件で来た」と言った。マサは昨日のレストランの代金を払っていなかった。


マサ斉藤が無銭飲食の罪でアメリカの刑務所に入っていたのは、公式文章に記された事実なのだが、プロレスラーというショービジネスの住人として、エピソードは語られるたびに面白おかしく盛られていった。その面白くなったバージョンが上の話だが、さすがにアメリカの警察に対して悪いと思ったのだろう、もう少し事実に近い話に訂正されたバージョンが後日話されている。


アメリカ遠征していたとき、行く先々のホテル代を浮かせるため仲間の悪役レスラーと二人一部屋でホテルを取っていた。同室だった悪役レスラーがマクドナルドで店員と口論になり、店のイスを投げつけ、マクドナルドのショーウィンドーを割ってしまった。そのレスラーはそのまま店から立ち去ったが、店は警察に通報し、婦人警官二人がホテルの部屋まで事情聴取に来た。部屋には何も知らないマサ斉藤がいて、婦人警官に「仲間の悪役レスラーは外出中でいない」と伝えたが、仲間をかくまっていると判断した婦人警官は部屋の中に入ろうとした。ホテルのドアで押し問答をしているとき、婦人警官は上着の内ポケットから警察手帖を出そうとしたが、銃で撃たれると思ったマサはとっさの判断で婦人警官にタックルし、警官の鎖骨を折ってしまった。そういった事情で無銭飲食の罪により刑務所に入ることになった。

これが最近訂正されたより正確な事実とされているのだが、公務執行妨害や傷害罪ならともかく、この話のどこが無銭飲食なのかが分からない。交番に連れて行かれて事情聴取されたときも、同じ質問に対して証言を二転三転させて辻褄合わない話を繰り返したから深夜まで掛かったのだろうなと思う。