ラーメンブーム

http://d.hatena.ne.jp/kidana/20131215 の続き
ラーメンブームは、フランチャイズ系飲食店文化のカウンターとして生まれた現象だ。
マクドナルドの日本一号店が1971年に生まれて、そこから80年代までファミリーレストランも含めたフランチャイズ系飲食店が、個人経営の大衆食堂を潰す形で、伸びてきた歴史がある。日本全国、どこに行っても同じ味、同じ価格、同じサービスで、安心感が売りなわけで、日本中に何千店舗もある店の方が、TVCMも打てるし、看板やロゴも見たことがあるし、親しみやすい。個人経営の飲食店では太刀打ちできないスケールメリットを生かした、原材料の一括購入による原価の価格破壊に、画一的なサービスの統一。


1990年に東京ウォーカー創刊で、ラーメン店やカレー屋など、都内何百店舗の味・価格調査が人気企画になったときに、最初の内はフランチャイズ店を回って、餃子の王将渋谷店と荻窪店の味の違いとか無理矢理違いを探してレポートを書くんだけど、そもそも日本全国同じ値段、同じ味、同じサービスが売りなんだから、違いなんて無い。徐々に、飲食レポート企画から全国チェーン店を外していく流れになって、非チェーン店オンリーで何百店舗回ってレポートを書く流れになる。テレビ東京アド街っく天国も同じで、非チェーン店で地元密着の有名店を紹介する方向になる。


今のラーメンブーム、特に東京ウォーカーと結びついた流れは、よく調べるとファンド的には大勝軒グループの系列店になる。ラーメンブームが起きた理由としてよく挙げられるのは、開業資金が安いという話だ。回転寿司なら、新品の回る機械を買うだけで一千万するし、新規で店を出すと三千万ぐらい掛かるのが、ラーメン屋だと三百万から開業できる。その開業資金の三百万を貸しているのが大勝軒グループで、大勝軒で数年下積みすれば自分の店を持つための開店資金三百万貸しますよというのが、系列店増殖の理由になっている。


マクドナルド的なフランチャイズだと、自分で新店舗を持っても、メニューも価格も本店の言いなりで、自分の自由に出来ないのが、大勝軒系は名前もロゴものれんも貸さないかわりに、メニューも値段も味も方向性も全部自前のオリジナルでやる方式。金は貸すけど口は出さない。全店舗がオリジナルの店舗名で、オリジナルのラーメンを出すので、東京ウォーカーのラーメン評論家もレポートを書きやすい。資金的には系列店だけど、メニューは同じじゃないので雑誌には取り上げられる。


独立系の店舗が人気を博す理由の一つは、インターネットの普及で、日本で一店舗しかない名店の情報をネット(食べログやラーメンデータベース)で検索し、携帯電話のマップを見て訪れ、ラーメンを携帯電話のカメラで撮って、感想をネットに上げる、そういうネットコミュニティーの発達がある。食べることだけが目的なのではなく、写真を撮って感想を書いて、ネット上やオフラインで、ラーメン店の感想を言い合うのが目的の一つになっている。チェーン店を回っても、人とつながる会話のネタにならない。


大量生産大量消費から、多品種少量生産への移行が、外食の分野で分かりやすい形で起きたのがラーメンブームだ。みんなと同じ商品、いつもと同じ商品を持つ安心感から、そこでしか手に入らない一点ものを求める消費者心理の変化がある。