2ちゃん文学/Wiki文学

電車男ごっこのやり方
2ちゃんねる実体験ぽい痛い話を書き込む
・それを、この手のフォーマットで編集
 サンプル http://www.kajisoku.com/archives/eid622.html
はてなダイアリー注目URL等に選ばれカウンターが回る
・映画化に向けて営業。決定と同時に書籍化。(書籍化は映画化かドラマ化が決まれば自動的に決まるが)
・基本的には2ちゃんねるの経営者と彼に雇われているスレッド板管理人(100人ぐらいいる?例、切り込み隊長)が、2ちゃんを使って金を儲ける手段の一つだと思う(あくまで個人的想像だが)。


参照:ひろゆきと切り込み隊長の裁判    
   http://www.heiwaboke.com/2007/09/vs_3.html
   切り込み隊長ブログ
   http://kirik.tea-nifty.com/diary/
   切込隊長HP
   http://oresamakingdom.net/
   ひろゆき公式SNS
   http://hiro.asks.jp/
   2005/12/16ひろゆき氏が語る「電車男」「のまネコ」そして今、注目のネタ    http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0512/16/news033.html


電車男ごっこサンプル
・姉ちゃんの自作詩集発見した
http://www.kajisoku.com/archives/eid420.html
弟が2ちゃんねるに転載した姉のポエムが書籍化決定!!!
http://mootoko.blog.shinobi.jp/Entry/716/
アマゾン
http://www.amazon.co.jp/dp/4062138166/
・教室で盛大にゲロ吐いた
http://blog.livedoor.jp/news2chplus/archives/50962312.html
書籍化決定。
http://kenlove.blog.shinobi.jp/


ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない
http://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-217.html
 2ちゃんねる実体験ぽい痛い話を書き込む
 Wikiフォーマットで編集
 はてなダイアリー注目URL等に選ばれカウンターが回る←今ココ
 映画化に向けて営業。決定と同時に書籍化。(書籍化は映画化かドラマ化が決まれば自動的に決まるが)


・ハムスター速報
http://urasoku.blog106.fc2.com/
の中だけでも、222も「電車男」的な企画がエントリーされてて
8月おすすめスレ一覧
http://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-170.html
のように月ごとに表彰されていたりする。
それなりに厳しい競争原理が働いているようだ。


パターン
2ちゃんねる→wikiによる編集→出版→映画化


この辺の素人ドキュメンタリー風でベストセラーになった
書籍の歴史をひも解くと
愛と死を見つめて
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9B%E3%81%A8%E6%AD%BB%E3%82%92%E3%81%BF%E3%81%A4%E3%82%81%E3%81%A6
「アキとマキの交換日記」
大和書房の銀河選書シリーズ


「わが愛を星に祈りて〜女子高校生の日記」(以下巻末紹介文)
春浅き北海道の雪の下に眠った女学生が、遺した日記。同級の男子学生への想いを三年間書き続けたままそれを告げることも無く、愛を愛とも知らずに卒業して、彼は東京の大学へ、彼女は翌年脊髄カリエスで死んだ・・・。


「生命ある日に〜女子学生の日記」
先天性心臓病のため、人事をつくした闘病のかいもなく二〇才の若く美しい生涯を閉じた女子学生の清冽な魂の記録。死の瞬間までほほ笑を忘れず、人と自然を愛し、鋭い感覚と理知で書き綴った感動のベストセラー。


「若きいのちの日記」http://www.daiwashobo.co.jp/2005/03/aitosi-2.html
「若草日記」「この生命ある限り〜ある女性の生と死の記録」などに行き着く。


「ハタチの原点」や「アンネの日記」などもその流れと言えるのかも知れないが、それらよりもより携帯小説的な痛い文章がこのシリーズにはある。


例えば「わが愛を星に祈りて」

の巻頭写真ページのポエムより
コバルト色の空のむこうに
 何があるのでしょう
 白く雪残る尾根のむこうに
 何があるのでしょう
 みどり繁る森のむこうに
 何があるのでしょう
 ・・・・・・
 ・・・・・・
 私が知りたいのは
 あなたの心なのです」


古本屋で買ったこの本に挟まっていた大和書房のチラシより
カギつき日記850円:あなただけの秘密を守るクサリのついた「カギつき日記です」
ペア日記:装丁は今流行のニチレのナイロンタフタのチェック生地を使用。


カギつき日記に載っている物として
古今東西「愛のことば集」
・現代教養小事典
・恋愛・婚約・結婚読本


ペア日記に載っている物として
・一年間の服装プラン
・フレッシュな便覧特集<マイ・ノート、タブー読本、恋をしたくなる瞬間、女性がイヤになる瞬間、贈物の展覧会、ホームカクテルを覚えましょう、一人で楽しむパーソナル・テスト、既製服を買うとき、BGの小遣い一覧表、美容カルテ、アレルギーMEMO、季節による肌の変化、標準サイズ>
などがある。
ここでいうBGというのは今でいうOLのことで、当時は女性社員のことを和製英語でビジネスガール、略してBGと言ったが、英語でビジネスガールは売春婦を意味した。東京オリンピック時に、外国人が日本に大量に訪れる予定がある。その時、女性社員をBGと呼ぶのは日本のイメージダウンになるのではないかということで、この語は廃止されOLという語に置き換えられた。ここに書かれているBGはその名残。

携帯小説的な痛い言葉の使用によるノンフィクション風ベストセラー本は、今に始まる話でなく、団塊世代、60年代からあった。
柄谷の「畏怖する人間」に掲載されている高橋和巳論を読むと、高橋和巳携帯小説の先駆者にすら思える。


携帯小説の文体と高橋和巳大江健三郎とかの60年代の団塊世代向け純文学の文体は似ていると思う。携帯小説は携帯のスペックの問題で一話が250字以内、恋空の場合、一話が大体160文字以内だ。短い字数の中でインパクトのある単語やフレーズを入れなくてはならない。60年代の団塊世代向け純文学も、似たような条件の中で作られていると思う。文通や交換日記や文通雑誌やラブレターが流行っていた時代に、若者にとってオシャレでカッコ良いワンフレーズの引用元としてそれらが機能していたわけで、カッコ良い決めセリフの羅列みたいな小説を書かざるを得ない環境があったと思う。文章のどこを切ってもカッコ良い決め台詞だと、引用もしやすいし、書評も書きやすいし、口コミでも広がりやすい。マスコミ口コミ含めたメディアに載りやすい。


携帯小説というのは基本的に、新聞小説や書簡小説や日記文学の流れにあるのだと思う。細切れの短いフレーズ、短いあらすじを寄せ集めて本にしている。


対する書き下ろしの単行本小説(ラノベ・ジュニアノベル)などは、戯作・演劇の流れにあると思う。演劇・映画・ドラマは一話完結で、長くても2時間半。それ以上長くなると、イスに座っているお尻が痛くなる。相手が聞き取れるスピードでしゃべる場合、一分間のセリフの文字量が四百字詰め原稿用紙一枚。一時間もののドラマだと原稿用紙60枚。二時間だと120枚。本一冊が原稿用紙四百枚だとして、400−120=280枚ぐらいが情景描写になる。セリフと描写の比率が大体、1:3〜1:2。地の文が語りより多くなる。


電車男的な実録風小説の形式だと、すべてが「語り=話し言葉」になるが、書下ろしには「地の文=書き言葉」が発生する。小説の進化は、「地の文=書き言葉」が生まれて、量的に話し言葉を圧倒して行く歴史だ。印刷技術の発達で文字が小さくなる。製本技術の発達でより分厚い本を綴じることが出来るようになる。製紙技術の発達で、一枚の紙がより薄く、より軽く、より丈夫になる。これらの技術によってもたらされるのは、一ページの文字量が増え、本が分厚くなり、一冊のページ数が増え、一冊の文字量が増えたということだ。原作の映画・演劇の長さが変わらず、一冊の文字数が増えれば、セリフに対する、地の文の比率は上がる。セリフしかない戯曲を仮に人物画だとすれば、地の文による情景描写の発見・発達は、風景画の発見・発達に似ている。戯曲小説の地の文だけを新聞小説や雑誌小説に逆輸入したのが「ボズのスケッチ集」から「ぼくが電話をかけている場所」につながるスケッチと呼ばれる文芸ジャンルだ。これは文字通り風景画なのだと思うし、文学史的には前期自然主義写実主義時代に発明された技法なのだと思う。


携帯小説・2ちゃん小説への批判や生理レベルの嫌悪は、写実主義(≒書き言葉・風景画)から戯曲(≒話し言葉・人物画・キャラクター小説)への批判の形を取っている。


個人的にスケッチ(写生)とショートショート(戯曲・プロット)の関係など気になる。